ロッテは佐々木に「いいチーム」、阪神は「夢ある指名」 元プロ捕手が見たドラフト

ロッテ1位指名の大船渡・佐々木朗希(左)と阪神1位指名の創志学園・西純矢【写真:編集部】

阪神は5位まで高校生を指名「みんな近い将来を担ってくれるであろう選手たち」

「2019年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」は17日、都内のホテルで開催され、セパ12球団から支配下で74選手、育成で33人の計107人が指名を受けた。注目の大船渡・佐々木朗希投手は4球団競合の末にロッテ、星稜・奥川恭伸投手は3球団競合の末にヤクルトが交渉権を獲得。大学NO1投手の明大・森下暢仁投手は広島が一本釣りに成功した。また、侍ジャパンU-19代表で4番を務めた東邦・石川昂弥内野手にも人気が集まり、3球団競合の末に中日が交渉権を獲得した。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「各球団の特徴が出たドラフトだった」と分析。まずは、1位の西純矢投手(創志学園)、2位の井上広大外野手(履正社)ら、5位まで甲子園を沸かせた高校生を指名した阪神について「夢のある指名だった」と印象を明かした。

「みんな近い将来を担ってくれるであろう選手たちですね。井上は、阪神が求めていた右のロングが打てる外野手。西は打撃もいい投手なので、セ・リーグに行ってくれて楽しみもありますね。投げて打って、という姿を見たい。5位の藤田もいいキャッチャーになれる素材です。阪神の捕手は、正捕手の梅野に加えて坂本、長坂がいて、岡崎もいる。育成上がりの片山も打撃がいい。藤田が順調に育てば、片山についてもいろんな選択肢が出てくるかもしれません。絶対数が少ないので、しばらくはそういう形にはならないでしょうが」

 さらに、野口氏が「個人的に良いドラフトだと感じた」というのが中日だ。「ドラ1の石川を相思相愛で獲れたのはもちろんですが、岡野を3位、郡司を4位が獲れたのは大きいですね。もちろん、2位の橋本も大きい。さらに、5位の岡林も将来が楽しみな投手。そう見ていくと、中日が良かったなという印象です」。また、オリックスについても「いいドラフトだったと思います」と分析。「宮城は外れ外れ1位でしたが、もう一段階上で出てきてもおかしくなかったと思います。村西は三振奪取能力のあるスリークオーターなので、オリックスのリリーフ陣にいいピッチャーが1枚加わったなという印象ですね」。

「奥川はオールスター明けにでも1軍で投げくれれば」

 一方で、今回はそれほど大きく外した球団もなかったと見ているという。

「楽天もビッグネームは獲れていませんが、球団がしっかりと調査して信念を持って指名した選手たち。若手がそれなりに育ってきているチームなので、ここで指名された選手が良くなっていけばとは思います。DeNAは森の1位指名は驚きましたが、3位の伊勢、4位の東妻を獲れた。DeNAは東妻を育てるのは急務になるでしょう。伊藤光の後をどうするのかと考えると、大卒の捕手を一人獲っても良かったかなとは感じましたが。あとは、個人的に7位の浅田を推しているので、右が少ないDeNAの中では将来が楽しみな逸材だと思います。

 日本ハムは佐々木を外しましたが、左が欲しくて1位で河野が獲れたのは大きいですね。西武はチーム事情を考えると、3位までがピッチャーというのは当然でしょう。1位の宮川はもちろんですが、3位のBC埼玉武蔵・松岡も面白い。“林昌勇2世”と言われていますが、適度に荒れている感じで、右打者は嫌なタイプでしょう。巨人は外れ外れ1位でピッチャーの堀田に行きましたが、スカウトの評価も高く、将来性がある投手です。ソフトバンクは2位で海野を獲れたのが大きい。ソフトバンクの捕手は甲斐、高谷といて、栗原もいますが、それでも足りないと見ているので、期待したいですね」

 では“ビッグ3”を獲得した球団はどうか。まずは森下の一本釣りに成功した広島については「競合覚悟だったのでしょうが、一本釣りで獲れたのは幸運でしたね。投げる時に体が開くとも言われていますが、修正できるポイントですし、個人的には気になりません。大学NO1ピッチャーとして、素質は間違いない」と言う。西武と同じように投手の“補強”が急務となっているヤクルトは、3球団競合の末に目玉の一人の奥川を引き当てた。高校生でありながら完成度が高く、即戦力としても期待できる右腕だ。

「奥川は順調に調整が進めば、来季開幕とまでいかなくても、オールスター明けにでも1軍で投げくれればいいですね。あとは、大卒のピッチャーを3人獲ったので、1人でも2人でも当たってくれれば。正直、全員を見ているわけではありませんが、4位の大西は阪神のメッセンジャーが絶賛した投手ということなので、いい形でチームにハマってくれればいい。日体大にしても創価大にしても最近いいピッチャーが出てくるので、2位の吉田、3位の杉山も期待値は高い」

 そして、163キロ右腕の佐々木はロッテへ。獲得した球団の育成力が重要になってくるとも言われているが、野口氏は吉井理人投手コーチの存在が大きいと見ている。「名コーチの吉井さんがいるので、しっかりプログラムを作って、それに沿って指導していくのではないかと思います。佐々木本人にとっては、いいチームだったのではないかと。吉井さんはダルビッシュも大谷も見ているので、そういう人がいるのは大きいですね」。圧倒的なポテンシャルを誇る“未完の大器”を名コーチがどう育てていくか、大きな注目が集まる。

 プロ野球界にはドラフト下位指名から球界を代表するプレーヤーになった選手も多くいる。この中にどんな“掘り出し物”がいるのかも、今後の楽しみになってくる。(Full-Count編集部)

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