高3でTJ手術も「筋肉は裏切らない」 楽天3位の慶大津留崎はダル流トレで進化

楽天から3位指名を受けた慶応大・津留崎大成【写真:小西亮】

高校3年時に右肘手術、「もう投手はできないかもしれない」と覚悟した日も

 学ランの上からでもよく分かる屈強な体をした右腕が、瞳を真っ赤に染める。苦しんだ日々を思うと、こらえきれなかった。17日の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、楽天から3位指名された慶大・津留崎大成投手。慶応高校3年の秋に右肘の靭帯再建術(トミー・ジョン手術)を決断し、復帰登板まで1年半を要した。投げられない不安を打ち消すように取り組んできたウエートトレーニングが球速9キロアップを生み、プロへの道を開いた。

 腕が曲がらない。思うように動かない。「もう投手はできないかもしれない」。覚悟した時期もあった。同期の郡司裕也(中日4位)や柳町逹(ソフトバンク5位)が1年生から東京六大学リーグ戦で活躍する姿を見ていると、ろくに球を投げられない自らが余計に不甲斐なかった。プロなんて頭の片隅にも想像できず、ただ「チームの戦力になりたい」と思うばかりだった。

 そんな時、2015年にトミー・ジョン手術を受けたダルビッシュ有(現カブス)の記事をふと見かけた。復帰を助けるトレーニングの重要性に気付かされ「基礎筋力をつけないとうまくはいかない」と一念発起。リハビリの一環でいざ取り組み始めると、すぐに没頭するようになった。「ウエートをやっていると、自分の体が格好良くなっていくんです(笑)」。今ではスクワットで180キロ、ベンチプレスで110キロを上げるまでになった。

大学2年春のリーグ戦で復帰、球速は9キロアップの153キロに

「趣味(のレベル)を超えている」と大久保秀昭監督も舌を巻くほどの向学心。その成果は、はっきりと数字に表れた。2年春のリーグ戦で復帰。高校時代に最速144キロだった直球は153キロまで急成長した。今春のリーグ戦では5試合計5イニング2/3を投げて防御率0.00。今秋も4試合に登板して無失点を続けており、6連勝で首位に立つチームを支える。今月19日からは広島1位の森下暢仁投手を擁する明大との戦いを控え「まずは、この先の野球人生を考えることなく準備をしないといけない」と目先の戦いを見据えた。

 慶大でプロ志望届を提出した6選手のうち「一番指名されるのが遅いのでは」と指揮官も予想していただけに、驚きも喜びも格別だった。投げられないどん底から、大学4年間で成し遂げた大逆転。「つらい時期もありましたが、ずっと近くで支えてくれた両親と兄貴に感謝したい」。声が震えた。

 報道陣から色紙を渡され、記した言葉は「筋肉は裏切らない」。楽天の本拠地・仙台の印象を問われ「トレーニングにはタンパク質が必要。仙台の牛タンを食べて体をでっかくしたい」と笑いを誘った。涙のち笑顔。鍛え上げた体と豪速球を代名詞に、杜の都へと向かう。(小西亮 / Ryo Konishi)

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