ラグビー日本代表が挑む南アとは 日本の勝機は?世界の下馬評は?

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史上初めてW杯の決勝トーナメント進出を決めた日本を因縁の対決が待っている。

W杯2回優勝の強豪、南アフリカとの闘いだ。

なぜ「因縁」なのか。

前回W杯で日本は南アを撃破した。「スポーツ史上最大の番狂わせ」と報じられた勝利から、日本ラグビーの快進撃が始まったからだ。

時事通信

2015年9月19日、イングランドW杯で南アフリカを34−32で破り、歴史的勝利を喜ぶ日本代表の選手ら。

この勝利は世界を震撼させた。W杯を主催するワールドラグビーは「W杯史上最大の衝撃」と評価した。

この勝利は、世界中を驚かせた一方、日本にはそれまで長い間「冬の時代」が続いていた。

ラグビー日本代表は1987年の第1回W杯から出場を続けている。2011年W杯までの日本の通算成績は1勝21敗2分。1991年にジンバブエに勝ったのが、たった一度の勝利だった。

そんな日本が、2015年にイングランドで開かれたW杯のグループリーグ初戦で、W杯2回優勝の強豪・南アフリカを撃破したのだ。

日本代表はこの勝利で、大きな自信を得た。選手らは「勝利は決して一度だけの奇跡ではなく、厳しい準備を重ねてきたうえでの必然」と胸を張った。

そして今回の大会では、代表のフィジカルと戦術をさらに発展させ、破竹の4連勝をあげた。

その背景には、南ア戦で日本の実力を見直した強豪国がその後、日本とのテストマッチに応じるようになり、強化が進んだこともあげられる。

その日本が、W杯の大舞台で再び南アフリカを迎えることになる。

2015年の再現となるか。世界は固唾をのんで見守っている。

南アの特徴は、屈強なフィジカル

時事通信

南アの特徴はまず、体格を活かしたパワーだ。

日本で最も背が高いのは、トンプソンルーク選手(ロック)の196センチ。一方で南アの先発には、2メートル超が2人いる。ともにポジションは、トンプソン選手と同じロックだ。

ロックは長身が選ばれるポジションだ。スクラムで第2列から全体を押し上げ、ラインアウトでは飛び上がってボールを受けることが多い。

そして驚異的な速さのウイング

AFP=時事

南アのもう一つの武器は、スピード。

チェスリン・コルビ選手(写真)は身長170センチと小柄だが、筋肉質な身体と世界トップレベルの速さを誇るウィングだ。

W杯開幕前の9月に行われた南アと日本の練習試合で、コルビ選手は2トライしている。

この試合で日本は41−7で敗れたが、日本のジェイミー・ジョセフ監督(ヘッドコーチ)は10月18日の会見で「あの試合を向こうはテストマッチととらえていたが、こちらはリハーサル。我々にとってアドバンテージになる」と語り、その結果は意に介さない姿勢を見せた。

この試合はW杯本番に向けた調整のためのもので、両チームとも本番のように死力を尽くしたり、手の内をすべて見せたりはしていない。

ジョセフ氏の発言から、日本が南アの攻略策を練っていることがうかがえる。

日本の強みはスピード、スタミナ、そして組織力

時事通信

各チームと比べると体格でやや劣る日本は、これまでの試合で、2人がかりのダブルタックルで多くの敵を食い止めてきた。

しかし、1人の相手に2人がかりとなると、どうしても数的不利に陥る。

それを解決する手段が、倒れてもすぐ立ち上がって前線に戻る素早いリロード(復帰)だった。

タックルした選手がすぐ立ち上がり再び突っ込むためには、スタミナとスピードが必要になる。日本代表はエディ・ジョーンズ前監督の時代から、スタミナ、スピード、そしてパワーの強化を続けてきた。

W杯公式サイトは「日本の強みは、ラグビーの常識を覆すプレー」と高評価

World Rugby / Via rugbyworldcup.com

ラグビーW杯の公式サイトは、10月18日、日本8強に進出した要因を分析した記事を配信した。

この記事では、日本の松島幸太朗選手らがひらりと敵をかわしながらボールを手に突進する場面を映像付きで紹介。俊敏さを活かして走り回り、陣地を前に進めてきたのが勝因の一つと分析。

「ドアを開ける方法はたたき壊すだけではない。カギを使えば開けられる。日本は相手によってそれぞれのカギを見つけ、勝ち上がってきた。今回も南アフリカの『カギ』を見つけることができるだろうか」と勝利に向けたポイントを指摘した。

また、ラグビーでは同じ方向にプレーし続けて敵陣を偏らせたうえで、一気に逆に展開してスペースを突くのが得策とされる、とした。

そのうえで、「日本は守備側がついてこられないほど、素早く右に左に展開する」「常にボールを動かし、素早く動くことで実力を最大限、発揮している」と、日本が今大会で見せた戦術を紹介している。

日本はキックへの対処に要注意

時事通信

対応が必要な部分もある。

9月28日のアイルランド戦で、日本は相手のキックから2トライを奪われた。

いずれも、フィールド中央付近から、日本のディフェンスラインの裏を狙った高いキックを蹴り出された。走り込んできた選手が日本の選手を圧倒するかたちでキャッチし、そのままトライした。

スコットランド戦でも試合冒頭、キックから似たような場面をつくられ、これを起点に先制トライを奪われた。

南アはスクラムハーフのファフ・デクラーク選手(背番号9)とスタンドオフのハンドレ・ポラード選手(同10=写真)の2人がキックを得意とする。この2人が蹴り上げてくるボールの処理には、注意が必要だ。

海外メディアの予想は南ア有利...

海外メディアは一様に、南アが有利と見ている。

ガーディアン紙は、W杯の一次リーグで敗退したことがなく、2度の優勝を経験した南アと、決勝トーナメント初進出の日本の立場の違いを、こう表現した。

「南アにとって、W杯はこの試合から始まるように感じている。一方で日本にとって、ここまでのドラマは、すでに大きな転機だった」「日本の栄光がさらに続くとは考えにくい」

そのうえで「世界のラグビー界は日本の勝利を願っているが、南アほど空気を読まないチームもない」と、南アの勝利を予想した。

テレグラフ紙も、「スコットランドと日本はともにハイテンポで似た闘い方だったが、日本の方がより巧みだったから勝った。一方で南アは身体が大きく、スコットランドのようにスペースを与えない」とし、「南ア37-17日本」と予想した。

ラグビー大国ニュージーランドのニュースサイトstuffは「日本はホームの大観衆のサポートを受けるが、南アが10点差で勝つ」との見方を示した。

英国のブックメーカー、ウイリアムヒルは南アのオッズを1.18倍、日本を5.5倍と設定、南ア有利とみている(10/19現在)。

「奇跡」といわれた2015年の勝利を超え、これから日本がW杯で「勝って当然」と言われるチームとなれるか。

その進化と真価が問われる試合となる。

日本代表には南ア代表資格がある選手が3人いる。

時事通信/時事通信

なお、日本代表には南ア代表になる資格があった選手が3人いる。

南ア国籍だが日本で3年以上プレーし、日本代表を選んだピーター・ラブスカフニ選手(写真右)とヴィンピー・ファンデルヴァルト選手。そして、松島幸太朗選手(写真左)だ。

俊足を活かして今大会で5トライをゲットした松島選手は、ジンバブエ人の父と日本人の母のもと、南アフリカで生まれた。幼い頃に日本に帰国した。

ラグビーでは、その国で3年以上居住するか、両親の出身地、あるいは自分の出生地で代表になることができる。

松島選手の場合、両親の母国のジンバブエと日本、そして出生地・南アの3つの選択肢があった。

松島選手は桐蔭学園高(神奈川)を卒業後、高校の監督の勧めで南アに渡った。現地でも将来を嘱望され、南アU20代表候補に選ばれた。

しかし、日本代表としてW杯出場を目指すことを決め、南ア代表は辞退。今の活躍がある。

そして松島選手が南アU20代表候補となった時、同時に選ばれたのが、南アの高速ウイング、コルビ選手だった。

互いを知り、ともにスピードを武器にする2人のマッチアップは、試合の見所の一つになりそうだ。

決戦の行われる10月20日は「ミスター・ラグビー」と呼ばれた日本のレジェンドの命日でもある。

時事通信

南ア戦が行われる10月20日は、日本のラグビー界が大きな喪失を体験した日でもある。

華麗なプレーと端正なルックス、そして高い知性で「ミスター・ラグビー」と呼ばれてきた日本ラグビーのレジェンド平尾誠二さんが2016年、胆管細胞がんにより、53歳の若さで亡くなった命日なのだ。

平尾さんは京都・伏見工高時代から注目を集め、当時史上最年少の19歳4カ月で日本代表に選出された。選手としてW杯に3回出場。現役引退後は代表の監督としてもW杯で日本を率い、生涯を日本ラグビーの強化と発展に捧げてきた。

代表監督時代には、初めて外国出身者を主将に選出。さらに現日本代表監督でニュージーランド人のジョセフ氏を日本代表の選手に招集するなど、日本代表の多国籍化・多様化を進めた。

NZ出身のリーチマイケル選手が主将を務め、代表選手31人中15人が外国出身という、多様性を力に進む今の日本代表の姿は、平尾さんが切り開いた路線の延長上にある。

10月20日には東京・丸の内で、がんの啓発活動や、がん研究の寄付支援などを行うNPO法人「deleteC(デリートC)」のキックオフイベントが開かれる。

平尾さんの命日であるこの日にラグビー選手らが立ち上がり、ラグビーを語るトークセッションが行われる予定だ。

BuzzFeed Japanは、deleteCのメディアパートナーに選ばれている。

W杯の日本招致にも尽力し、その実現を誰よりも喜んだ平尾さんはきっと、空の上から日本の勝利を願っているはずだ。

キックオフは10月20日午後7時15分。東京スタジアムで。

先発する予定の中村亮土選手の決意