少年法適用引き下げで意見交換 「抑止力に」「冷静な議論を」

少年法の適用年齢の引き下げや加害者更生などについて意見交換したシンポジウム=大阪市、市立西区民センター

 国の法制審議会(法相の諮問機関)で、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満へ引き下げることについての議論が続く中、大阪市で13日、シンポジウムが開かれた。少年事件で子どもを亡くした遺族からは「年齢の引き下げは犯罪の抑止力になる」と期待の声が上がる一方、少年の更生を支援する弁護士は、他人への共感性を育むために「(少年院などでの処遇は)18歳、19歳にも必要」と引き下げに反対姿勢を示した。
 少年事件で子どもを亡くした遺族らでつくる「少年犯罪被害当事者の会」(武るり子代表)がシンポジウムを主催。21回目の今年は、少年法の適用年齢の引き下げや被害者が望む更生などをテーマに登壇者が意見を交わした。
 23年前、暴行事件で高校生の息子=当時(16)=を失った武代表は「時代に合っていない法律だったから遺族は苦しめられた。罪を犯す少年の多くは『少年法で守られる』ことを知っている」と指摘。「軽犯罪の少年には何らかのフォローが必要だが、年齢の引き下げは『少年法で守られる』という加害者の意識を変え、絶対に抑止力になる」と言葉に力を込めた。
 犯罪や非行をした少年の更生支援に20年以上携わる山崎健一弁護士(横浜市)は、適用年齢の引き下げに反対の立場。「他人への共感性が乏しく、被害者へ謝罪する気持ちにまで至らない子たちが一定程度いる」とし、「重大事件は逆送(検察官送致)され、刑事裁判で重い処罰もできる、18歳以上は死刑も課せられる、そういった観点を含め、本人を更生し、新たな被害を生まないための制度として冷静に議論していく必要がある」と述べた。
 シンポでは、加害者の矯正教育を疑問視する意見も相次いだ。
 11年前の逮捕後に「誰でもいいから殺してやろうと思った」と供述した少年=当時(19)、懲役5年以上10年以下の不定期刑=が運転する軽トラックにはねられ、息子=当時(24)=を殺された母親は「どのような矯正教育がなされたのか。(加害少年は)何も変わっていない」と嘆いた。
 「被害者等通知制度」を利用し、半年ごとに少年の処遇状況を確認し続けた。「被害者の視点を取り入れた教育」も受けていたとされるが、最後まで反省の態度は見られなかった。画一的な矯正教育では反省せず、更生にたどり着けない少年もいるとして、「加害者の真の更生を考えるとしたら、一人一人の性格や育った環境などを考慮して(教育を)考えてほしい」と求めた。
 出所者を雇用して再犯防止を図る「職親プロジェクト」に取り組むカンサイ建装工業(大阪府岸和田市)の草刈健太郎社長は、新たな被害者を生まないため、加害者更生の必要性を訴えた。少年院や少年刑務所の出所者を積極的に雇用しており、「(罪を犯す少年は)周りに悪い友達がいる。彼らを見捨てず、善悪の判断がつけられるような心の教育をコミュニティーがやっていかなければいけない」と語った。

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