長崎県内の里親登録 増加傾向 委託率は10%台、伸び悩み

 予期しない妊娠、死別、虐待などの理由で実の親と暮らせない子ども(要保護児童)を育てる里親制度を巡り、長崎県では近年、里親登録数が増加傾向にある。4月1日現在、前年から20世帯増の160世帯。一方、要保護児童のうち、児童養護施設や乳児院ではなく、家庭的な環境の里親などに委託される割合は10%台の横ばいが続く。

 長崎県は2年前から離島を含む県内全域で里親体験者が経験を語る「出前講座」を開くなど制度の周知に力を入れている。現在、北松小値賀町を除く20市町に登録者がおり、長崎市39世帯、大村市27世帯、佐世保市24世帯-など。14市町は5世帯以下。

 長崎県内の里親家庭で暮らす子どもは約60人。受け入れは大村市12世帯、長崎市11世帯、佐世保市6世帯-など。登録者のいる市町のうち、8市町はゼロとなっている。

 長崎県によると、県内では社会的養護が必要な18歳未満の子ども約530人のうち、児童養護施設、乳児院、里親、家庭的な環境で少人数の子どもを育てる「ファミリーホーム」で暮らす要保護児童は計約460人。このうち、里親と同ホームへ委託された割合を示す委託率は16.1%(4月1日現在)。県は2029年度に委託率を31.8%まで引き上げる目標を掲げる。

 長崎県こども家庭課は委託率が伸び悩む理由について、実親の同意が得られないことや、里親と里子のマッチングがうまくいかないことなどを挙げる。同課の担当者は「大前提は『実親の元へ戻り、一緒に暮らせるのが一番』ということ。ただ、それが難しい子どものために、選択肢を増やしていく必要がある」と登録を促していく考えを示す。

 熊本県にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)設置に尽力した同病院の元看護部長で、里親や特別養子縁組制度の啓発活動に取り組む田尻由貴子さん(69)は「(里親への委託率が高い)欧米に比べ、日本は制度の浸透がかなり遅れている。(実親以外の人が育てることについて)社会が醸成しておらず、一般の人はまだよく知らない。まずはそういう環境に置かれた子どもがいることを知ってもらい、多くの人に『自分事』の問題として考えてもらうことが大事だ」と指摘する。

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