第1戦に敗れた巨人 専門家が指摘する左の代打不足「ウイークポイントになるかも」

巨人・原辰徳監督【写真:Getty Images】

鷹・千賀はカットボール多投で快投「年々、投手としての総合力が上がっている」

 2019年の日本シリーズが19日に開幕し、第1戦はソフトバンクが7-2で巨人に快勝した。エースの千賀滉大投手が106球を投げ、7回3安打5奪三振3四球1失点の快投。打線も先制された直後の2回にグラシアルの2ランで逆転すると、6回に中村晃の犠飛、7回には一挙4点を奪い、突き放した。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は千賀の投球を絶賛しつつ、2回に逆転したことが試合のキーポイントになったと分析。一方、敗れた巨人については左の代打がいないことが「ウイークポイントになるかもしれない」と指摘した。

 まずは、カットボールの割合を増やして巨人打線を抑え込んだ千賀の投球について、野口氏は「元々、今シーズンはカットボールの割合を増やしていましたが、この試合はフォークの制球があまり良くなかったので、真っ直ぐばかりではダメということで、カットボールが多くなったのだと思います。ただ、ピンチになったら全球カットボールという場面もありましたし、直球のスピードも上がっている。やはり、千賀は年々、投手としての総合力が上がっていますね」と評価。3年連続で第1戦先発という大役を見事に果たした右腕を絶賛した。

 また、ソフトバンクの攻撃でポイントになったのは、2回と7回の場面。野口氏はまず「一番の功績は千賀のピッチングだとは思いますが、阿部慎之助のホームランで先制された直後に2点を返せたのが非常に大きかった」と指摘した。1点を追う2回、ソフトバンクは1死から中村晃が二塁打で出塁し、グラシアルが巨人先発・山口に逆転2ランを浴びせた。相手に傾きかけた流れをすぐに取り戻す貴重な2得点だった。

「中村晃とグラシアルが、体に近い速い球をうまく打ちました。難しい球だったと思います。中村晃は例によって早めに足を上げて、速い球に負けないタイミングを取っていましたけど、それにしてもインハイの難しい球をよく打ちました」

 さらに2点リードで迎えた7回は先頭・松田宣が二塁打で出塁すると、工藤公康監督は周東を代走で送り込んだ。続く内川がバントを決め、大量4得点を呼び込んだが、「あそこで周東を出したのは、内川もチームも救った采配でした。周東を使ったおかげで、楽にバントができるようになりました。普通だったら余裕でアウトというバントでしたが、周東がいたおかげで、三塁に投げもしなかった。あの足が理由で侍ジャパンに選ばれるのですから、さすがでしたね。周東の使い方はシリーズの鍵を握りそうな感じがします」と野口氏。ソフトバンクにとって、“切り札”の存在は今後も大きい。

 一方で、敗れた巨人については「千賀に牛耳られたというか、力負けしたかな」と指摘。「7回の2点目も、100球前後になってきて球が明らかに落ちてきた感じがしましたが、それで捕まえたという感じでした。ただ、千賀がもう1試合投げるとしても、早くても5戦目。それまでにどう星取りをしていくか。亀井、坂本、丸に関しては経験もありますし、きっちり修正してくるでしょうが、岡本が完璧にやられてしまったので心配ではあります。それが尾を引かなければいいかなと」。先発の山口についても「立ち上がりは少し硬さは感じましたが、6回3失点は責められないのではないでしょうか」と評価した。

セはパ本拠地で16連敗も…「第2戦に勝てば五分以上の感覚になる」

 そんな中で、野口氏は「巨人で1つ気になった点がある」という。

「左のピンチヒッターがいないなと。第1戦では、2点を追う7回2死二、三塁で小林に回ったところで、重信を代打として起用しました(結果は見逃し三振)。敵地ではDHがあるので、阿部と大城を同時にスタメンで使える。一方で、ピンチヒッターは9番・キャッチャーのところが出しどころになります。その時に左打者がベンチにいない。右は陽岱鋼と石川慎吾がいますが、左バッターも入れておくべきではないでしょうか。重信より石川慎吾、陽岱鋼のほうがまだ良かったかもしれません。そうやって見ると、ピンチヒッターが手薄ですね。

 阿部と大城がスタメンで3、4打席立てるという利点がある一方で、勝負どころで9番に回った時にピンチヒッターがいない。この先も、小林にも炭谷にも中盤から終盤のチャンスで回ればピンチヒッターが必要になるはずです。特に、第2戦は右のアンダースローの高橋礼なので、勝負どころで左打者を使いたいのではないでしょうか。日本シリーズは40人枠の中からベンチ入りメンバーの出し入れができる。ただ、(ベンチ外の選手で)誰がいるかとなると、思い浮かばないのも事実です。もしかしたら、このシリーズの巨人のウイークポイントになるかもしれません。右打者で右投手が打てないという打者はいないので、右打者を代打で出してもいいとは思いますが、アンダースローの高橋礼に対しては左打者のほうが圧倒的に有利なので」

 巨人が何らかの手を打ってくるのか、注目が集まるところだ。

 日本シリーズは第2戦が重要と言われている。ただ、野口氏は「昔は1戦目に情報が足りないところを補うために色々と情報収集をしていました。初戦はコントロールのいい技巧派を先発させることが多かったりしたのは、情報収集して、それを2戦目から生かすという意味で2戦目が重要と言われていました。ただ、今はスコアラーの人数もいっぱいいますし、情報を集める機器もたくさんある。交流戦で対戦もするので、なかなか当てはまらない部分があると思います」と言う。「1戦目にエースで獲って勢いづかせたほうがシリーズとしては大事。第2戦も大事は大事ですが、昔ほどではない」。つまり、初戦を取ったソフトバンクが「流れ的には有利になった」と指摘する。さらに、セ・リーグのチームが日本シリーズで敵地16連敗というデータもある。

 ただ、そういったデータがあるからこそ、第2戦を巨人が取れば、流れは変わるかもしれない。「もし巨人が第2戦を取ったら、星取り的には五分ですが、それ以上の感覚にはなると思います」。巨人としては、まずは第2戦をモノにするしかない。そのために原監督がどんな手を打ってくるのか、注目が集まる。(Full-Count編集部)

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