基本方針案 「地方」言及 高まる期待 長崎IRの行方 佐世保誘致への課題・1

政府が公表したIR整備の基本方針案を説明した県議会特別委員会=県庁

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備で、政府は最大3カ所とする区域認定の基準を含む基本方針案への意見公募を3日に締め切った。来年初めごろに方針を決定する。これまでに佐世保市のハウステンボス(HTB)での整備を目指す本県のほか、大阪府・市、和歌山県、横浜市が誘致を表明。北海道と東京都、千葉市、名古屋市も検討している。熱を帯びるレースの行方を追った。

 政府が基本方針案を公表した9月4日以降、県と佐世保市は内容の分析を急いだ。中村法道知事も担当部局から詳細な資料を取り寄せ、自ら目を通した。「想定内だ」。担当者はひとまず胸をなで下ろした。
 県と佐世保市が打ち出す「長崎IR」は、日本のゲートウエー(玄関口)として、アジアの成長力を引き込み、九州全域の地方創生を実現する「地方型」を目指している。方針案を公表した記者会見で菅義偉官房長官は「優れたものであれば都市、地方にかかわらず認定していく」と言及。誘致に携わる関係者にとって“サプライズ”とも言える発言に期待感は高まった。
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 この半年ほど前の3月、県内関係者の間に「誘致は困難」という見方が広がった。政府はIR施設の規模をまとめた政令を閣議決定。客室総面積が10万平方メートル以上の巨大なホテルと国際会議場、展示場を併設することを必須条件とした。安倍晋三首相はIR整備推進本部の会合で「これまでにないスケールとクオリティー」を求めた。地元政財界からは「ハードルが高い」とため息が漏れた。
 それでも6月に佐世保市内で開いたセミナーには満席を超える約510人が参加。長崎IRへの参入に関心を寄せる6事業者がそれぞれ構想を明らかにした。総投資額も最大で5500億円に上った。国内外事業者の投資意欲に触れ、関係者の誘致実現に向けたイメージは膨らんだ。
 佐世保商工会議所副会頭で、長崎マリンIR推進協議会の辻宏成会長は基本方針案に「地域における十分な合意形成を確保」と明記されたことを評価。他都市と比べ、反対の声が目立たない本県に優位性があり、「追い風だ」と受け止める。
 1日の県議会特別委で、県は方針案について説明した。おおむね予想した内容だったとはいえ、担当者にとって気掛かりな記述もあった。2030年に訪日外国人旅行者数を6千万人、消費額を15兆円とする政府目標達成への「大きな貢献が見込まれること」。長崎IRへの課題が突きつけられたように感じた。

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