アクセス 空港の強化にジレンマ 長崎IRの行方 佐世保誘致への課題・2

交通アクセスの改善のため機能強化が求められる長崎空港=2016年3月

 昨年の秋、中村法道知事と朝長則男佐世保市長は東京・霞が関にいた。視線の先には麻生太郎副総理兼財務相が座っていた。中村知事らはカジノを含む統合型リゾート施設(IR)をハウステンボス(HTB)に誘致する計画について説明。麻生副総理からは「長崎空港の機能拡張が重要だ」と集客力を懸念する言葉が返ってきた。
 長崎県へのIR誘致で最大の課題とされるのがHTBまでの交通アクセスだ。世界のVIPを呼び込むためには長崎空港の機能強化は欠かせない。長崎IRへの参入を目指す事業者も不安視する。
 これまでも県は空港の機能強化を図ってきた。特に運用時間の「24時間化」は長年の懸案で、現在の午前7時~午後10時を延長できないか模索している。だが航空交通管制などの態勢強化と、深夜・早朝帯の路線誘致が進まず、実現のめどは立っていない。
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 停滞した状況を打開するため、地元の大村市は2017年から空港の運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入を県に提案。民営化で運営が効率化され、着陸料の引き下げや路線誘致が進み、24時間化に近づくと青写真を描く。さらに「IR誘致にも有利だ」と訴える。
 しかし、空港を管理する国に民営化を要望することに対し、県新幹線・総合交通対策課は「検討はしているが、課題は多い」と歯切れが悪い。懸念の一つが、五島や壱岐、対馬を結ぶ離島航空路への影響だ。運航を担うオリエンタルエアブリッジ(ORC)は、長崎空港ターミナルビルを運営する「長崎空港ビルディング」(NABIC)などの支援を受けている。民営化でNABICが運営から外れれば“ビジネスモデル”が崩れる可能性も浮上。県が重視する離島政策との両立でジレンマを抱える。
 これに対し大村市は、空港運営を担う民間事業者を公募する際に離島航空路の維持を条件に入れることなどを主張。「解決法はある」とする。ORCは経営不振や機体の老朽化に伴う不具合が続く。「現状を改善するためにも、民営化を優先し、新たな活力を導入するべきだ」とする声は県庁内にもある。
 交通アクセスを巡っては、長崎空港とHTBを結ぶ「2次交通」の問題もある。陸路で片道1時間程度かかる移動時間をどう短縮するかが焦点。課題が山積する状況に、県北のある県議は「空港にしろ道路にしろ、これまで後回しにしてきたツケがきた。本気でIRを誘致するなら、できることから早急に取り組むべきだ。残された時間は少ない」と危惧する。

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