地元理解 賛否、確定とは言えず 長崎IRの行方 佐世保誘致への課題・4

長崎IRの候補地となっている佐世保市のハウステンボス。政府の基本方針案は「地域における十分な合意形成」を求めている=2014年11月

 「まずは正確な情報発信に努め、道民目線を大切に判断する」。6月の北海道議会。就任後初の方針説明に臨んだ鈴木直道知事は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を誘致するかどうかの結論を先送りする考えを示した。苫小牧市を優先候補地として検討を重ねた前知事からバトンを受けたが、道民への意向調査などを踏まえて年内に判断する方針で、慎重な姿勢を崩していない。
 政府が公表した基本方針案は、地域における「十分な合意形成」と「良好な関係構築」を求めている。特に、カジノ設置に伴うギャンブル依存症の増加や治安の悪化を心配する声は根強く、十分な対策とともに地元住民の理解が必要とされている。
 2014年にハウステンボス(HTB)への誘致を表明した県は、早くから県内各地で説明会を開いた。このほか、依存症や治安などの専門家でつくる有識者会議の助言を受けながら対策を練ってきた。担当者は「県民の理解は他の都市よりも一歩進んでいる」と自信をのぞかせる。
 佐世保市議会は17年9月に、県議会は同じ年の12月にIR推進の意見書を可決。ともに8割を超える議員が賛成した。市議会は今年9月にも、HTB内にある候補地(約31ヘクタール)の売買予約に関する諮問案に同意。朝長則男市長は「市民の代表である議会との合意形成はできている」と強調した。
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 県などが県民の理解が進んでいるとする“根拠の一つ”が、18年の県知事選に合わせて長崎新聞社が実施した県民アンケートだ。IR誘致への賛否を有権者500人に尋ねたところ、賛成が46.6%で、反対の38.2%を上回った。
 一方、NHK長崎放送局によると、この春の佐世保市長選でNHKが市民854人から回答を得た出口調査では「中止すべき」が57%、「推進すべき」が43%だった。この夏の参院選前に長崎新聞社などが840人に聞いた県民への世論調査でも反対派が49%で、賛成派は37.2%だった。
 こうした数字をみると、正しい理解や不安の払拭(ふつしょく)も含め、県民の意思は不確定なようにも映る。ある県警関係者は「犯罪や警備など多岐にわたる対応を現態勢でできるのか」と疑問視する。
 この春の県議選、佐世保市長選、佐世保市議選では、IR誘致の是非は争点にならなかった。市民団体「ストップ・カジノ!長崎県民ネットワーク」の新木幸次事務局長は「県民への意向調査をして、正確な声を聞いてから進めるべきだ」と訴える。

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