浜田省吾の「MONEY」を聴いて考える、自分の本当の欲望って何だ?

1984年 10月21日 浜田省吾のアルバム「DOWN BY THE MAINSTREET」がリリースされた日

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浜田省吾の9枚目のスタジオアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』がリリースされたのは、1984年10月21日。間に『Sand Castle』というバラード集をリリースしているものの、前作『PROMISED LAND〜 約束の地』からいつもより長いほぼ2年という間が空いてのリリースだった。

これは、浜田省吾が今まで所属していたホリプロを離れ、個人事務所「ロード&スカイ」を設立してから制作した最初のオリジナルアルバムであったからだ(多分そうだ)。

「ロード&スカイ」、なんとも浜田省吾の作った事務所らしい名前だ。個人事務所の設立、何か新しい浜田省吾が始まるような予感。僕は当時、この『DOWN BY THE MAINSTREET』のリリースを首を長くして待っていた。

同アルバムは、浜田省吾にとって非常に思い入れのある作品だと言われている。それは、浜田省吾が初めて自分でプロデュースした作品であり、第2のデビューアルバムを作ったと公言しているからだ。

「ファーストアルバムのあの時期、70年代の、20代の頃に作るべきアルバムを作り損ねた。だから今、作るって感じ。こういうアルバムが、本来自分が作るべきアルバムだったんだ」

―― と浜田省吾は語っている。

また、独立して、作りたい音楽を作れるようになったから、作り損なった音楽を作ったという一方で、「30代になったからこそ、しっかり20代や10代のことを見据えて作れるようになった」とも語っている。

浜田省吾が語る通り、このアルバムは、まさに10代から20代の若者の人生のサウンドトラックのようだ。1984年の僕は大学1年生。このアルバムの主人公達と同じ世代。そのメッセージに影響されない訳がない。

だから、僕にとってもこれは非常に思い入れのある作品で、浜田省吾のアルバムの中で最も聴いた回数が多いアルバムだ。

特に影響を受けたのは1曲目の「MONEY」。言わずと知れた浜田省吾の代表曲でもあるハードロックテイストの曲だ。初めてレコードに針を落とした瞬間に聴こえてきた印象的なギターフレーズに鳥肌が立ったことを今でも思い出す。

「世の中金だ」、「金こそ全てだ」と歌っているように思われがちだけど、実は逆。確かにこの曲の主人公は、金を巡る人間模様に嫌気が差し、いつかは自分もビッグマネーを手にすることを夢見ているけど、「大切なものは金じゃ買えないってことが何でわからないんだ」というのが浜田省吾の本当のメッセージだ。

 欲しいものはすべて
 ブラウン管の中
 まるで悪夢のように

この部分がこの曲の核だと浜田省吾は言う。金が欲しいというよりも、ブラウン管の中から大量の購買意欲を刺激され、そこには、一生手に入らないものや手の届かない生活がある。しかし、それらがあたかも身近にあるように描かれ、リアリティーがあるように見えるけど、本当はリアリティーなんてない。

本当はないのに、すごくリアルなものとしてブラウン管には映って、それに煽られてそれを目指すも、自分には手が届かない事に気づき、自分の欲望に傷付く。

僕は、この曲を聴くと “自分の居場所はここでいいのか、良かったのか”、と今でも自問自答する。この曲に出会った18歳の時も、自分のリアルな欲望ってなんだろうって真剣に考えた。そりゃ金は欲しいけど、金で人を選んだり、場所を選んだりはしないぞ、と心に決めたりもした。

実際にそういう場面には出くわす事なくここまで来たけど、この曲に18歳で出会って良かったと思っている。自分を見つめ直すきっかけをくれたのだから。

ちなみに、メルセデスが嫌いになったのもこの曲のせいだ。ドンペリの存在もこの曲に教えてもらった。結構いろいろ影響受けちゃってる「MONEY」という曲、恐るべし。

歌詞引用:
MONEY / 浜田省吾

※2017年11月14日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 藤澤一雅