台風19号、株式市場の受け止め方は… 「乗り越えられる危機」か

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東日本を中心に大きな被害をもたらした台風19号が日本を通過してから1週間が経過したが、いまなお被害の全容は明らかになっていない。行方不明の人の捜索は続き、家が流されたり、浸水したりといった人の避難生活も長引いている。今後の復興には経済の後押しは欠かせない。全体の状況が見渡しにくい中にあって、経済を映す鏡である株式市場は台風の影響をどう捉えたのか。まずは相場の初期反応を確認してみたい。

被害が明らかになった銘柄に売り優勢

テレビやネットで報じられた被害の大きさを象徴する映像の1つは、車両基地に並んだ北陸新幹線の車両が浸水していたことだろう。この映像が伝わったことから、JR東日本(証券コード9020)は、様子見ムードが強まった15日こそ小幅に上昇したが、16日から3日続落。この間に約4%下落した。同社は18日に10編成が浸水したと改めて発表。1編成あたりの価格は約33億円とされるが、修理や新造する場合、どれだけ保険でカバーできるかなどに関心が集まっている。

被害が明らかになった銘柄では、売りが目立った。千曲川の堤防が結果した影響で、長野市にあるホクト(1379)のエリンギ工場が浸水。16日にテレビのニュースで取り上げられ、ホクト株は17日に大幅安になった。ラーメンチェーンの幸楽苑ホールディングス(7554)は郡山工場(福島県郡山市)の被災で東北や北関東などの約150店舗を一時休業した。同社株は15日から4日続落し、1月29日以来の安値水準と下値を探る値動きだ。

復興需要は建設業以外にも波及か

一方で、復興需要に関連する銘柄は上昇が目立った。長野県内最大手の建設会社である北野建設(1866)は、15日に1日で約13%上昇する大幅高になった。土木も手がけるゼネコンで、公共施設の再建も含めた復興特需を先取りしようという値動きになった。建設関連では住友大阪セメント(5232)が15日から買いを集め、18日には8カ月半ぶりに年初来高値を更新した。「堤防や建築物の再建にはセメントが欠かせない」との見方が、同社株を押し上げている。

復興関連では思惑的な動きも出ていた。日立製作所(6501)や川崎重工業(7211)への買いが15日以降に優勢になっていた。両社は浸水した北陸新幹線の同型車を製造している。浸水した車両はどの程度修復ができるのか、廃車になるのかなど明らかではないが、先回り的に買いを入れる動きとの指摘が聞かれた。このほか復旧作業には作業服が必要ということで、16日までワークマン(7564)が上値を追ったが、17日以降は利益確定の売りに押されて急落した。どの業種に需要が発生するのか株式市場は見極められていないようだが、復興需要に広がりが出るとの見方は根強い。

金融銘柄では消化難か

金融も復興には欠かせない要素の1つだが、台風被害に関しては材料として消化難といったところか。3メガバンクの株価にいずれも大きな値動きはなく、むしろ足元の長期金利の上昇に支えられて底堅い展開だ。災害の直後に動きが出やすい損保株にしても、SOMPOホールディングス(8630)、MS&AD(8725)、東京海上ホールディングス(8766)の大手3社の値動きも、現時点で小幅にとどまっている。

格付け会社のスタンダート・アンド・プアーズ(S&P)は、今年の台風15・19号による国内損保の保険金支払額が「合計1兆円に近くなる可能性がある」としながらも、再保険を勘案すると損保会社の現在の資本力で受け入れられるとの見方を18日に発表していた。金融以外の業界にとっては、損害保険がきちんと支払われるという安心感につながりそうだ。

相場全体は年初来高値

相場全体に目を向けると、主要銘柄の値動きを示す日経平均株価、東証1部の全銘柄を反映する東証株価指数(TOPIX)ともに、台風19号の通過後に年初来高値を更新した。背景には次世代通信規格「5G」の本格的な普及を控えて、スマートフォンや半導体の市況回復に対する期待感があるようだ。米中が貿易交渉を進めるとの期待もあって、外国為替市場では円相場が下落したのも追い風になった。

米アップルの「iPhone」が市場の見込みより世界で売れていたこともあり、工場の操業停止を発表した銘柄でも太陽誘電(6976)は17日に年初来高値を付けた。電子部品関連や、輸出関連は堅調な値動きだ。一部で台風の影響が出ながらも、海外景気の後押しで日本株は復調している。こうした動きを総じて見ると、台風19号による被害は甚大だったが、日本にとって「乗り越えられる危機」との見方を示唆しているようだ。

(経済ジャーナリスト・山本 学)