全試合出場の神鋼・山中、全力尽くし充実感 ラグビーW杯 31歳の初舞台

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日本-南アフリカ 前半、突破を狙う山中亮平=20日夜、東京都調布市、味の素スタジアム(撮影・中西幸大)

 全力で戦い抜いた。ノーサイドの笛にフルバック山中亮平(神戸製鋼)の表情には充実感が漂った。「失うものは何もない。思いっきりぶつかって、ラグビーを楽しむ」。31歳で初めて出場したW杯。準々決勝でも積極的なプレーは光った。

 今大会全試合に出場し、先発は3試合目。前半4分に必死のタックルも実らず先制されたが、力強いランで、南アフリカの壁を押し戻した。流れるようなパスにも絡み、奮闘を続けた。

 勇姿を見せたかった人がいた。3年前に亡くなった元日本代表監督、平尾誠二さんだ。

 「平尾さんがいなければ今の僕もいない」。山中が神鋼に入社した2011年4月、日本代表候補合宿中のドーピング検査で口ひげの育毛剤が違反とされ、2年間の資格停止処分が科された。プロ選手の山中は解雇も覚悟した。失意に暮れた時、当時ゼネラルマネジャーを務めていた平尾さんは社員として残る道を残した。「若い才能をつぶしたらあかん」。平尾さんは近しい関係者にそう言ったという。

 東海大仰星高、早稲田大で全国優勝を果たした逸材は「空白の2年間」を耐えた。最終選考でメンバーから漏れた15年W杯後も諦めなかった。昨季、神鋼の日本一に貢献し、W杯出場をかなえた。1次リーグ最終戦のスコットランド戦。山中が左足でボールを蹴り出し、勝利を決めた瞬間は、日本ラグビー界の歴史に刻まれる。

 「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」。山中の早稲田大ラグビー部の同級生が手掛けた今大会のキャッチフレーズ。その言葉通り、ラグビー人生のすべてを夢の舞台で出し尽くした。(山本哲志)