県庁跡地調査に期待

 歴史上重要な施設があった長崎市江戸町の県庁跡地で、県教委の埋蔵文化財調査が16日から約1年間の見通しで始まった▲江戸時代の禁教令以前にキリスト教の拠点「岬の教会」があり、禁教後は長崎奉行所西役所が置かれた。長崎の歴史の複雑さ、豊かさを体現した地、それが県庁跡地だ▲かつて、歴史を生かした跡地活用を知事に要望した脚本家の故市川森一さんをはじめ多くの人々が注目してきたが、県庁の移転によってようやく詳細に調べる機会が訪れた。貴重な遺構や遺物が出てくれば、国内外のキリスト教徒らも長崎に一層目を向けることになる▲跡地には長崎市が文化芸術ホールを建設する計画。既に基本構想を7月に策定したが、今後遺構などが出てきた場合の対応も想定しながら備える必要がある▲市公会堂の解体で市民らが使えるホールは現在限られている。県庁跡地から何も出土しなければそのままホールを建設することになるが、出土したら新市庁舎完成後の現市役所跡地などに建設することも考えられる。その際も迅速にホール整備が進められるよう、市は県庁跡地と市役所跡地の両にらみで計画、準備する必要がある▲県庁跡地そして埋まっているかもしれない遺構、遺物は県民の財産。まずは出土を期待しながら調査を見守りたい。(貴)

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