登山業界に革命を起こす!? 超軽量&高耐久素材「ダイニーマ」のギアに注目! アウトドアアイテムの素材として、最近見かける機会が増えた「ダイニーマ」。使われている製品の生地はどれもペラペラで、いかにも頼りなさそうですが、実はすごい実力を秘めているのだとか。今回は、ダイニーマの何がそんなに優れているのか、主に素材に注目して探ってみました。

あの半透明の生地の正体は?

ウルトラライト系のアウトドアギアで最近よく見かけるようになった、薄いビニールのような半透明の生地。ザックやサコッシュなど、さまざまなアイテムで使われていますが、中身が透けて見えるくらい薄くてすぐ破れてしまいそうですよね。

この薄い生地、調べてみるとどうやら「ダイニーマ」という素材のよう。

ダイニーマは一体どんな生地なのか?薄いけど本当に山で使って大丈夫?
今回はその疑問について、詳しく探ってみたいと思います。

ダイニーマとは繊維につけられた商品名

ダイニーマというのは、実は「超高分子量ポリエチレン」という繊維に付けられた商品名
通常は2~30万である分子量を100~700万にまで高めるだけではなく、その分子同士の結びつきも非常に強いため、耐衝撃性・耐引裂強度に優れ、強靭な素材として注目を集めています。
それだけではなく、防水性、さらには軽量さも兼ね備えており、ロープや釣り糸、防弾ベストの素材としても利用されています。

ダイニーマを生地として利用する場合、基本的には他の素材に織り込むか、樹脂でラミネート加工を施してフィルム状にしたものを使用します。樹脂の厚みやラミネートする素材を変えることでさまざまな性質の素材を作ることができ、極薄の素材を作ることも可能です。

あの半透明の生地の正体は、ラミネート加工されたダイニーマだったのですね。

ダイニーマ?イザナス?

ダイニーマについて調べていると、「イザナス」という名称を目にすることがあります。
実はこの2つは同じもの。販売される場所によって名前が変わってきます。

ダイニーマは、東洋紡とオランダDSMが共同開発した繊維で、日本では日本ダイニーマ(東洋紡とオランダDSMダイニーマの合弁会社)が製造している繊維。同じ繊維に関して、東洋紡からは「イザナス」、DSM社からは「ダイニーマ」という商標にて、販売が行われております。

ダイニーマを使用した生地3種

ダイニーマを使用した生地は、さまざまなものが開発されています。ここでは代表的な生地を3種類紹介します。

DYNEEMA® COMPOSITE FABRICS (旧CUBEN FIBER)

ダイニーマ®・コンポジット・ファブリック(DCF)とは、ダイニーマ繊維を紫外線硬化樹脂でラミネート加工した極薄のフィルム状の生地。
織目や編目がないので生地自体に通気性はなく、水も通しません。以前はキューベン・ファイバーという名称でしたが、改称された現在でも、通りのよいキューベンファイバーの呼び名を使うケースが多く見受けられます。

DYNEEMA® COMPOSITE HYBRIDS

軽量ポリエステル繊維やダイニーマ繊維などをDCFにさらに重ねてラミネートした生地です。DCFよりも高い耐摩耗性と耐引裂強度、防水性を誇りますが、価格はそのぶん高くなります。

DYNEEMA® HARDLINE

ナイロン生地にダイニーマ繊維を織り込むことで強度を高めた生地です。ナイロン生地より磨耗や引き裂きに強く、岩場や藪が多いフィールドでも安心して使えます。耐水性のある裏地でコーティングされていますが、DCFより防水性は低くなります。

ダイニーマのメリット・デメリットは?

ダイニーマの一番の特徴はその強度です。
重量ベースで見た場合、鉄の15倍の強さをもち、編み方や裁縫の仕方によっては、数百キロの荷重にも耐えられます。一般的な210デニールのナイロン生地と比較すると、1/4~1/5の重さで同じ強度を出すことができるため、近年ではウルトラライト系のアイテムによく使用されています。

長所の非常に多い素材ではありますが、いくつかデメリットもあります。まず、フィルム状に加工されたダイニーマには、通気性や透湿性、伸縮性がありません。また、国内で購入できる製品が、軒並み高価であることもデメリットといえるでしょう。

ダイニーマを使った製品にはどんなものがある?

ダイニーマを素材に使用した製品は、すでに数多く発売されています。透湿性や伸縮性がないことから、ウエアなどにはあまり採用されていないようですが、その防水性や軽量性を活かして、特にバックパックやサコッシュの生地としてよく使用されています。

テント

軽量性と防水性の点で、テントの素材としては非常に優秀。PU加工された素材と異なり、加水分解を起こさないため、大事に使えば非常に長持ちします。

ビッグアグネス フライクリーク HV2カーボン with ダイニーマ

ザック(バックパック)

ザックでは、ウルトラライト系のメーカーが積極的にダイニーマ素材を採用しています。どのモデルも極めて軽量で、耐久性にも優れています。

フェリーノ ラディカル 30L

アンドワンダー キューベンファイバーバックパック

マックパック パーシュート

ハイパーライトマウンテンギア 2400 WINDRIDER/2400 SOUTHWEST PACK

サコッシュ

ダイニーマの持つ強度は、タフに使われることの多いサコッシュにうってつけ。ファッションのアクセントとしても活躍します。

ケルティ ダイニーマサコッシュ

アンドワンダー キューベンファイバーサコッシュ

ウォレット

山で使うウォレットは、中身を濡らさない素材であることが必要条件。ついでに軽くて丈夫な素材なら、もはや言うことはありません。

アンドワンダー ハイブリッドキューベンファイバーウォレット

薄くて軽い、でも強いダイニーマ

薄い、軽い、強いの3拍子揃った「ダイニーマ」。いかめしい名前の響きそのままに、かなり頼れるヤツらしいことがわかりました。独特の透け感を持ったバックパックやサコッシュを山で使えば、目立つこと請け合いです。これからギアを選ぶ際には、ぜひ素材欄にも注目してみてください!

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