ラグビーW杯「日は高く昇った」 日本戦観戦記

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試合後、南アフリカの選手と健闘をたたえ合う日本の流大(中央)=20日、東京都の味の素スタジアム(小野宏明)

 ラグビー・ワールドカップ(W杯)の日本代表の快進撃が終わった。熊本県の荒尾(現・岱志)高出身の流大[ながれゆたか]選手(サントリー)を追ってこの1カ月、日本戦を間近で見ることができた。その活躍は予想の範囲を超えていた。

 13日、横浜市の日産スタジアムであった日本-スコットランド戦。開場3時間前にもかかわらず駅前からスタジアムにつながる道路は赤白のジャージーをまとった多くのファンであふれ返っていた。混雑する喫茶店で時間待ちしていると、30代ぐらいの夫婦の会話が聞こえてきた。「ラグビーって面白いね。必死に立ち向かう姿が格好いい」。そう言う妻に夫も「そうだろう」とうなずいていた。

 約6万7千人で埋まったスタジアムの熱気はすさまじかった。試合は「まさに死闘」と表現するにふさわしい攻防。勝利の瞬間、「ウオー」と地鳴りに似た歓声が湧き起こり、場内はニッポンコールが響き渡った。

 誰がここまでの日本の快進撃を予想できただろうか。開幕戦となった9月20日の東京・味の素スタジアムでのロシア戦。試合には勝ったが、序盤、日本は硬さからミスが目立った。流選手も試合後、「そりゃあ緊張しました」と振り返った。自国開催での初戦という重圧、何より満員の日本人ファンに囲まれての試合は、これまでほとんどの選手が経験がなかった。

 「このままでは8強入りの目標達成は厳しいのでは」。そんな不安を打ち消してくれたのが2戦目のアイルランド戦。「勝てないまでも、いい試合をして弾みをつけてほしい」。そんな思いを抱いたことが恥ずかしくなるほど日本が輝きを放った。驚いたのは、当時世界ランキング2位のティア1(強豪10カ国・地域)を打ち破ったことが、「奇跡」とは感じられなかったことだ。

 「勝てると信じていた」。流選手は試合後に語ったが、その言葉通り日本は躍動した。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの下で、前回大会前を上回るハードワークを積んだことで、運動量は尽きなかった。加えて日本代表が真の意味で「ワンチーム」になれたことが大きかった。

 ポジションごとにリーダーを設け、選手たち自らが考えてチームの意思統一を図った。外国籍の選手も多い中、「日本の“巌[いわお]”」といえる結束力をつくり上げ、「選手の大部分がいまだアマチュアのチームに在籍している中で勇敢で機知に富み、あふれ出る創造性で、この競技に光をともした」(英紙ガーディアン)と海外メディアからも称賛された。

 ラグビーW杯はこれまで伝統国による持ち回りでの開催だった。そんな中でアジアで初めて開かれた大会。「日本で本当に盛り上がるのか」といった声は開幕直前になっても尽きなかった。もし、日本代表が8強に進出できなければ盛り上がるどころか熱は一気に冷めてしまう。

 ある関係者が漏らしたが、実は日本戦以外でのチケットの売れ行きが心配だったという。それも日本代表の快進撃で列島のラグビー熱が一気に高まり、解消された。

 桜の戦士たちの奮闘でこれまでラグビーに関心のなかった多くの日本人にその醍醐味[だいごみ]が伝わったはずだ。日本ラグビーの夜明けというより、今は確信を持って言える。「日は高く昇った」(梅ヶ谷昭人)

(2019年10月22日付 熊本日日新聞朝刊掲載)