がんゲノム11月から保険診療 富山大附属病院、遺伝子解析し治療法選択

がんゲノム医療拠点病院への指定と保険診療の開始について説明する林篤志病院長(左)、林龍二がんゲノム医療推進センター長(左から2人目)ら=富山大附属病院

 富山大附属病院(富山市杉谷)は21日、がん患者の遺伝子変異を調べて最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」で、県内唯一の拠点病院に指定され、11月から保険診療を始めると発表した。手術や抗がん剤など標準的な治療が効かなかった人や希少がんの人を対象とした新たな治療が、県内で本格的に行えるようになる。同病院で林篤志院長らが会見した。

 厚生労働省は昨年3月、がんゲノム医療の提供施設として全国11の「中核病院」と富山大など100の「連携病院」を指定した。富山大附属病院は昨年6月にがんゲノム医療推進センターを開設。昨年9月から今年6月までに、中核病院である京都大と連携し、先進医療や自由診療による遺伝子検査を22例実施してきた。

 全国でさらに迅速に検査を進めるため、厚労省は今年9月に富山大附属を含む全国34施設を中核と連携の中間に当たる「拠点病院」に指定。これを受け、富山大附属病院は単独で、遺伝子検査から専門家による治療法の検討まで、がんゲノム医療を完結できる体制が整った。

 がんゲノム医療を推進するため、厚労省は6月から一部の遺伝子検査を公的医療保険の適用対象とした。1回の価格は56万円で、患者負担は1~3割。富山大も適用に向けた準備を進め、11月から保険診療が可能となった。

 林龍二センター長は「拠点病院となったことで、県内で実施できるがんゲノム医療の絶対数が増える」と強調。県内での実施数は年間100件程度と見込む。県内でがん診療を行う他の病院とも連携していく方針で、林篤志院長は「県内でがんゲノム医療を必要とする一人でも多くの患者に役立てるようにしたい」と述べた。

© 株式会社北日本新聞社