豪州SC:ニッサンで奮闘したケリー・レーシング、2020年はついにフォードへスイッチ

 ホールデンとフォードがしのぎを削ってきたオーストラリア大陸伝統のシリーズ、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーに日本のマニュファクチャラーであるニッサンで勝負を挑んでいたケリー・レーシングは、2020年に向けフォードへスイッチすることを決断。フォード・パフォーマンスとパートナーシップ契約を結び、2020年は2台のマスタング・スーパーカーを走らせると発表した。

 ケリー・レーシングの代表であり、自らもニッサン・アルティマL33のステアリングを握って戦ったトッド・ケリーは、このアナウンスに際し「2020年シーズンに向け、我々のチームがデビューシーズンを席巻したフォード・マスタング・スーパーカーを走らせる一員となったことに興奮している」と、将来への期待を語った。

「僕たちはチームとして11年間、このスーパーカー・シリーズで戦ってきた。そして、ニッサンとの強固なパートナーシップを経て、新たなフェイズに進むべき時が来たんだ」

「2019年はカスタマーチームとして苦しい時期を過ごしたが、レースでの勝利を重ね、すでに実力が証明されたフォード・マスタングへのスイッチは、ケリー・レーシングに将来の成功のための最高の機会を提供してくれるだろう」

 2013年を前にニッサンとのファクトリー契約を結んだ彼らは、6年間にわたってニッサン・モータースポーツのワークス待遇チームとしてシリーズを戦った。しかし2018年を最後にこの契約は更新されず、2019年はプライベーターとしてニッサン・アルティマを走らせる厳しいシーズンを過ごしてきた。

 ケリー・レーシングは2020年も引き続き自社開発のエンジン(V8自然吸気OHV)を搭載する予定で、そのベースエンジンは当然フォード製の現行マスタング用に変更される。

チーム代表で兄のトッド・ケリー(右)と、エースで弟のリック・ケリー(左)、そしてフォードAUS&NZのカイ・ハートCEOが発表会に臨んだ
先日開催のVASC第12戦バサースト1000では、リック・ケリーの9位が最上位だった
そのバサースト1000で、リックとともに常にトップ5を争ったアンドレ・ハイムガートナーは、最後のセーフティカー出動の引き金に

 ここまで4台エントリーでアルティマを投入したチームは、来季2台体制を敷くのに伴い“レーシング・エンタイトルメント・コントラクト(REC)”と呼ばれるシリーズへの参戦枠のうちふたつを、他陣営に売却(またはリース)する手続きも進めている。

「ケリー・レーシングが、さらに2台のフォード・マスタング・スーパーカーをグリッドに並べてくれることを喜んでいます。これにより、大成功を収めつつある2019年を上回る興奮とニュースをファンに提供できるでしょう」と語るのは、フォード・オーストラリア&ニュージーランドのプレジデント兼CEOを務めるカイ・ハート。

 そして、フォードのモータースポーツ活動を統括するフォード・パフォーマンスのグローバルディレクターであるマーク・ラッシュブルックも「ケリー・レーシングとの協業は、すでに実績あるDJRチーム・ペンスキーとティックフォード・レーシングとのパートナーシップの上に築かれる」と、彼らの陣営入りを歓迎するコメントを残した。

「ケリー・レーシングは、エンジニアリングとドライバーの才能の両面で印象的な血統を持っている。マスタングへの切り替えは、彼らの高度なスキルを備えた技術面と、フォード・パフォーマンスのDNAを組み合わせる良い機会だと考えているよ」

 VASCではニッサンからフォードへのスイッチを決断したケリー・レーシングだが、同じCOTF(カー・オブ・ザ・フュチャー)規定のパイプフレームシャシーを使用する下位カテゴリー、Super2では引き続きアルティマを投入する。

 そして所有するRECのうち一枠はマット・ストーン・レーシングが、残るひとつをブラッド・ジョーンズレーシング、またはチャーリー・シュワルコート率いるチーム18 IRWINレーシングが購入すると見られている。

ニッサン・アルティマで複数の勝利を挙げてきたリック・ケリー。フォード・マスタングで常勝ドライバー入りなるか
REC購入予定のMSRは、トッド・ヘイゼルウッドが去りティム・スレードの残留が濃厚
2014年王者マーク・ウインターボトムをエースに据えたTeam18は、REC入手で2台目投入を示唆している

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