新型レヴォーグデビュー目前!スバル 歴代レガシィワゴンを振り返る

スバル 歴代レガシィ
スバル 歴代レガシィ

レガシィ30年の進化は、スバルのGT性能向上の歴史そのもの

1989年に初代レガシィが登場してから今年2019年で30周年を迎える。5代目以降は北米を主軸に置くようになるが、スバルのフラッグシップである事は変わりない。一方、日本市場では2014年に「25年目のフルモデルチェンジ」をキーワードに日本最適サイズで開発された「レヴォーグ」が実質的な後継モデルとして登場、今年の東京モーターショーでは2代目となる新型が登場予定となっている。

30年に渡って歩んできたレガシィの進化の歴史は、スバルのグランドツーリング(GT)性能の進化の歴史でもある。スバルの考えるGTとは、より速く/より遠くに/より安全に/より快適に/より遠くに……だ。つまり、要約すると「一芸に秀でるのではなく“総合性能”が重要」と言うわけだ。

開発コード44Bと呼ばれた初代

スバル 初代レガシィ

1980年年代、日本が大きく経済成長を遂げていく中、スバルだけはそのブームに全く乗れずにいた。いや、それどころか他社による買収や倒産の危機まで報道されるほど厳しい局面に立たされていた。当時のレオーネ(3代目)はターボもフルタイム4WDも用意されていたが、悪路走破性以外はライバルに対して全く歯が立たず……。このままでは「技術のスバル」とは言えないと言う危機感は会社全体に広がり、「クルマで勝負」、「本気でいいクルマを造る」と言う流れになったそうだ。そんな経緯から開発されたのが開発コード44Bと呼ばれた初代レガシィである。

開発コンセプトは「日本一で一番いいセダン/ワゴンを作る」だった。その実現のために、プラットフォームはスバル1000以来となる全面新設計でサスペンションは4輪ストラットが奢られた。エンジンも同じ水平対向ながら完全新設計となるEJ型を開発。トップモデルのRSには220psを発生するターボエンジンも用意された。開発手法も新たな手法が取り入れられ、縦割り&技術主導からプロジェクトチーム制へと変更。更に走りの味付けは一人の実験担当者の“神の声”に委ねた。その人は、現在STIに所属する辰己英治氏だった。彼はベンチマークとしてメルセデス・ベンツ 190を徹底的に解析、更にプライベートで参戦していたダートラでの経験を活かし「曲がる4WD」を作り上げた。

このようにして生まれた初代レガシィの走りは高く評価され、スバルのイメージは大きく変わった。発売当初、ターボモデルはセダン&MTのみの設定だったが、遅れてATの設定とステーションワゴンにも設定が追加されると、その人気は更に高まった。

追いかけられる立場となった2代目

スバル 2代目レガシィ

1993年、レガシィは2代目へフルモデルチェンジ。初代は日本一を目指していたが、2代目以降は「やるなら一番を!!」と世界一を目指した。そんな2代目の開発コンセプトは「継承・熟成」。初代は“挑戦者”だったが、世間の評価が高くなるとライバルモデルも登場。逆にレガシィは追いかけられる立場となった。

世の中のトレンドは3ナンバー化だったが、レガシィは5ナンバーサイズを死守。それが特長の一つにもなっていた。

エンジンはEJ型を継続採用するが性能はアップデートされた。特にターボモデルはシーケンシャルツインターボの採用で大きくポテンシャルアップが行なわれた。シャシーも基本構造は初代から受け継がれたが、ボディ剛性アップや居住性の改善などが実施されていた。

2代目のトピックは登場から3年後となる1996年に行なわれた大幅改良だ。スバル車は体力的な問題もありライバルよりも世代交代のスパンが長いが、それを逆手に取ってデビュー時のモデルでやり残したことに手を加えた。一般的にマイナーチェンジは商品性向上のための意匠変更や小改良が主だが、スバルはエンジン/シャシーを含んだ全域に手を入れた。つまり、見た目以外はフルモデルチェンジと言っていいレベルの変更だった。フラッグシップとなるステーションワゴンの「GT-B」、セダンの「RS」は量産車初の280psを達成した2Lシーケンシャルツインターボやビルシュタイン製倒立ダンパー&215/45R17タイヤを採用。バブル崩壊後で不景気な時期だったが、大ヒット作となった。この大幅改良を機に「ビックマイナーチェンジ」と言う言葉が生まれたとも言われている。

また、2代目では北米向けにツーリングワゴンをベースに車高を上げ、エクステリアにSUVルックが施された「アウトバック」を展開。日本では「グランドワゴン」として発売された。この当時はまだ販売比率は低かったが、ステーションワゴンベースのクロスオーバーSUVの先駆けとなった。

スバル 3代目レガシィ

スバルの安全神話を生んだ3代目

3代目は1998年に登場。消費が「本物志向」と「低価格志向」と二極化する中、レガシィは世界でも通用する「本物のブランド」を目指して開発が行なわれた。コンセプトは「レガシィを極める」だった。

先代に引き続き5ナンバーサイズを死守するが、ボディは新環状力骨構造の採用により、衝突安全性能は当時の格上モデルを凌ぐ成績を獲得。現在に続くスバルの安全神話を生んだ。ちなみにデビュー当初はステーションワゴンのみの設定で、セダンは半年遅れて登場。初代/2代目とステーションワゴンのヒットの影に隠れてしまったセダンのイメージを一新させるべく、B4のサブネームが与えられた。レガシィB4は、従来モデルよりもスタイリッシュなデザインや、ステーションワゴンと差別化されたグレード展開なども相まって、独自の人気を博した。

エンジンは基本的には先代を踏襲するが、2000年にグランドワゴンから改名されたランカスターに3.0Lのフラット6を追加。このエンジンは後にツーリングワゴン/B4にも設定された。シャシー関係はリアサスペンションをストラットからマルチリンクに変更された事が大きなトピックだ。ストラットタワーの張り出しを無くすことでラゲッジスペースの向上にも寄与しているが、メインは走りのレベルアップだった。

また、1999年に世界で初めて実用化したステレオカメラによる画像認識を用いた安全支援システム「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」を設定。まさにアイサイトのご先祖さまと言えるデバイスだが、当時は安全に対する認識はそれほど高くなく、台数は伸び悩んだそうだ。

3ナンバーボディとなった4代目

スバル 4代目レガシィ

4代目は2003年に登場。開発コンセプトは「走りと機能と美しさの融合」だ。ラインアップはステーションワゴン/B4に加えて、クロスオーバーSUVモデルのネーミングが北米向けと同じ「アウトバック」に改名。

3代目まで5ナンバーサイズを死守してきたが、4代目では全幅が先代+35mmとなり初の3ナンバーボディとなった。3ナンバー化には賛否があったが、スタイリッシュな内外装は歴代レガシィの中でも最も優れたデザインだと言う人も数多い。

その一方、世代交代の度に重くなっていった車両重量は、アルミや高張力鋼板の採用も相まって、先代比100kg近い軽量化を実現。更に全幅拡大によるステアリング切れ角向上で最小回転半径は逆に小さく、サイズアップによるデメリットは最小限に留められていた。

エンジンは2Lに「等長エキゾーストマニホールド」を採用。スバル独特の排気音は消えたが、燃焼効率の向上に加え、ターボモデルにはツインスクロール式シングルターボが採用され、水平対向の弱点と言われた実用トルクの細さや燃費性能についても大きく向上した。更に上級モデルにはスバル初の5速ATも搭載されている。また、2006年のビックマイナーチェンジではエンジン特性が変更可能な「SIドライブ」も設定された。

4代目レガシィはエンジンラインナップも豊富で、2Lや2Lターボ、3.0Lのフラット6に加え、モデル末期には4気筒の2.5Lターボも設定。更に欧州向けには2.0Lディーゼルターボも用意されていた。一部グレードには6速MTも設定された。

シャシーは先代を踏襲するが、軽量化に加えてGT系ではサスペンションアーム類に鍛造アルミパーツや新設計のビルシュタイン製ダンパーなどを採用。これらの効果によりハンドリングは更に向上した。その一方で、乗り心地の硬さが指摘されることもあったが、その辺りはスバルお得意の年次改良で最適化させている。特に2006年に行なわれたビックマイナーチェンジでは、車体側にも手を入れることで操縦安定性と乗り心地のバランス、更にはステアリング応答性も激変した。

また、安全支援システムは初期モデルにADAが設定されるも途中で姿を消すが、モデル末期にアイサイトへと進化して復活した。

4代目は歴代モデルの中でも最もロングライフとなったが、その実力はデビュー時から高く、2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤーも獲得(スバル車初受賞)している。

スバル 5代目レガシィ

「ぶつかならないクルマ!?」が話題となった5代目

5代目は2008年に登場。メインマーケットである北米の要望に応え、ボディサイズを大きく拡大。ゆとりある室内空間を確保したが、日本ではパッケージ重視のボクシーなデザインの変更も含めて否定的な意見も多かった。また、伝統のサッシュレスドアが廃止されたのも5代目からである。

先代+100kgと言う車両重量増加による動力性能低下を補うために、エンジンは2.0Lが廃止され2.5Lに、フラット6は3.0Lから3.6Lと排気量がアップされた。ただし、2.5Lターボは直下型ターボの採用によりフラットなトルクとターボらしからぬレスポンス、更には優れた環境性能を兼ね備えていた。また、2.5L-NAエンジンには新開発のCVT「リニアトロニック」を搭載。同クラスの2WDモデルに負けない燃費性能も自慢だった。

プラットフォームはスバル1000以来初となるエンジンマウント方法の変更に加え、マルチリンクからダブルウィッシュボーンに変更されたリアサスペンションを搭載した「SIシャシー」に変更。先代に比べて快適性は大きく向上したが、ハンドリングがやや大味になってしまったのも事実だ。

安全支援システムはデビューから1年後の年次改良でアイサイトの進化版となる「アイサイト・バージョン2」を導入。衝突回避性能がアップしたプリクラッシュブレーキと全車速追従機能付クルーズコントロール、AT誤発進抑制機能などを備えるが、導入時のキャッチコピー「ぶつかならないクルマ!?」が話題となり、日本での安全支援システムの普及のキッカケを作った事でも有名だ。

2012年のビックマイナーチェンジでは、エンジンを初代から続くEJから新世代ボクサーとなるFA/FBに変更。フラッグシップとなる2.0L直噴ターボ(FA20 DIT)は300ps/400Nmと歴代レガシィ最強スペックを誇った。フットワーク系も大きく手が加えられ、大味と言われたハンドリングから4代目を思い出すキビキビとしたスポーティな味付けを採用したものの、かつての人気を取り戻すことはできなかった。

6代目ではツーリングワゴンが廃止に

スバル 6代目レガシィ

6代目は2014年に登場。より北米志向のモデルへ進化しているが、世界的なステーションワゴン人気の下落に伝統のツーリングワゴンは廃止、セダンのB4とクロスオーバーSUVのアウトバックのみの設定となった。ボディサイズは更に拡大。ただし、拡大分をデザイン代に使うことで、先代よりもスタイリッシュに仕上がっている。インテリアもデザイン/質感共に大きく引き上げられており、スバルのフラッグシップらしいプレステージ性も手に入れている。

エンジンはターボ、更にはフラット6が消え、2.5L-NA+CVTのみの設定に。ただしエンジン、CVT共に大きく手が加えられており、実用域のドライバビリティや燃費は向上している。プラットフォームは先代から継承されるが、ボディやサスペンション取り付け部の剛性アップ、サスペンションの最適化に加え、アウトバックの上級グレードには「スタブレックス・ライド」(ピストンスピードに応じて減衰力を最適化可能)などを採用。基本性能はもちろん、数値に表れにくい「動的質感」の部分もレベルアップしているものの、歴代レガシィが培ってきた「スポーツ性能」という面では、やや物足りなさが残るのも事実であった。

安全支援システムはアイサイトがバージョン3へと進化。これまでの機能の向上に加えて、カラー認識や操舵支援機能/車線中央維持機能などの新機能も追加。更に一部改良では、アイサイトの前方検知機能に加え、側方/後方のアシスト機能パッケージ化した「アドバンスドセーフティパッケージ」も追加設定されている。

新型(2代目)レヴォーグや如何に!?

スバル レヴォーグ

そして2019年、レガシィは7代目へと進化。現時点では北米向けのみで日本向けは6代目が継続販売されているが、そう遠くないタイミングで世代交代が行なわれるだろう。

一方、日本では2014年に登場したレヴォーグは「25年目のフルモデルチェンジ」のキーワードの通り、5代目までのレガシィの立ち位置を継承している。初代レヴォーグは4代目レガシィ並みの扱いやすいボディサイズ、2種類のターボエンジン、WRX譲りのフットワーク、アイサイト・ツーリングアシストなどが高く評価され、モデル末期となる現在も安定した販売台数をキープしている。

その2代目レヴォーグが、東京モーターショー2019で世界初公開される。詳細はまだ解らないが、かつて初代レガシィがそうだったようにエンジン/シャシー、更に安全支援システムも含め、全方位での刷新が行なわれるだろう。つまり初代レガシィから築き上げたグランドツーリング性能は、30年目に登場する2代目レヴォーグによって、さらに高いレベルへと引き上げられているに違いない!!

[筆者:山本 シンヤ/撮影:SUBARU]

© 株式会社MOTA