クマへの麻酔銃使用 県外頼みの実情 自前の体制整備望む声も

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 18日から19日にかけて新潟県魚沼市の市街地で計6人を襲ったクマの捕獲には、麻酔銃も使用された。ただ、現時点では、麻酔銃による捕獲は新潟県外の団体に依存し、県内では独自の対応ができていない。同市以外にも今後、クマが市街地に下りてくる可能性を指摘する専門家もいる。県内でも麻酔銃で捕獲できる自前の体制整備を望む声はあるが、専門知識が必要なため人材の育成は容易ではないようだ。

 魚沼市では、2日連続で市街地にクマが出没し人を襲った。捕獲の際には麻酔弾が撃たれたが、それでも向かってきたために猟友会員が実弾で仕留めた。

 5月には上越市高田地区の中心部にクマが出没したほか、20日も糸魚川市や阿賀野市などの住宅地でクマが目撃されている。

 市街地にクマが出るようになったのは、環境の変化が大きい。野生動物に詳しい新潟大の箕口秀夫教授によると、林業が衰退し、山に人の手が入らなくなり、人間の生活圏近くにクマが生息するようになった。

 特に魚沼地方はえさ場のブナ林が市街地に隣接し「緩衝地帯がなく、裏山にクマが生息しているようなもの」と箕口教授。12月まで警戒が必要と呼び掛ける。

 山間地ではない市街地でのクマの捕獲では、猟銃に比べて麻酔銃は射程距離が短いものの、操作しやすいので仕留めやすいとされる。誤射なども起きにくく、安全性も高いという。

 しかし、県内には熟練の麻酔銃取扱者・団体がほとんどいない。県警によると、麻酔銃を扱うには専門知識が必要で、県内で許可が下りているのは3丁だけ。その3丁も「基本的にはサルなど小型動物に使われ、クマなどの大型獣には使われていないのでは」(生活安全企画課)とみられている。

 県環境企画課も「県内で麻酔銃によるクマの捕獲に対応できる団体の情報がない」とし、緊急時には、実績のある長野、群馬、富山、山形の計6団体を紹介することで対応している。今回の魚沼市や5月の上越市の場合も、市の要請に基づき長野県の専門家が駆け付けた。

 箕口教授は、本県でも自前の体制を整備する必要性があるとする。「複数地域で連携できる仕組みづくりが必要だろう。野生動物に特化した専門人材を県が雇用するのも手だ」という。

 一方、麻酔銃の扱いでは、県警に専用銃の所持の許可を得た上で、麻薬研究者として県から許可を得る必要もあり、すぐには人材を増やせないのが実情だ。

 長岡技術科学大の山本麻希准教授は「クマを見て瞬時に薬量の調整を判断しないといけないし、麻酔が切れてクマが襲ってくるかもしれない。命がけの仕事であり、人材育成は簡単な話ではない」と強調する。

 人材育成に関し、県環境企画課の五十嵐勝幸課長補佐は「麻酔銃が万能というわけではないが、専門家や市町村の意見を聞いて必要性を検討したい」とした。