鷹のドラフト舞台裏を探る 高齢化する野手陣…石川入札&佐藤“外れ1位”のワケ

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:荒川祐史】

驚きを持って受け止められた石川の指名、大方の予想は大船渡・佐々木だったが…

 日本シリーズが開幕する直前の10月17日、都内のホテルでは2019年の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が開催された。大船渡の佐々木朗希投手、星稜の奥川恭伸投手、東邦の石川昂弥内野手、明大の森下暢仁投手が注目を集め、佐々木はロッテ、奥川はヤクルト、石川は中日、森下は広島がそれぞれ交渉権を確定させた。

 今季パ・リーグ2位に終わりながら、クライマックスシリーズを勝ち上がり3年連続日本一への挑戦権を得たソフトバンクはドラフト1位でJR西日本の佐藤直樹外野手を指名。まず、石川に入札したが、抽選に外れると、右打ちで俊足強肩を武器とする社会人外野手の1位指名に踏み切った。

 ソフトバンクは当初、佐々木へ入札すると、大方の予想では見られていた。「その年1番いい選手を獲りにいく」という球団方針を掲げていたため、石川への入札は少なからず驚きを持って受け止められた。

 永井智浩編成育成本部長はドラフト後に「夏前には石川の1位を決めていた」と言う。夏の県大会が始まる以前にスカウトの間では、石川のドラフト1位は決まっていた。そこからは情報戦。「周りは佐々木だと思っていたみたいだったので、それだったら、そのままにしておけばいいんじゃないか、と」。

 昨季は小園の1位をドラフト直前に公表した。今年も早い段階で公表する可能性もあったが、「公表することで他球団が評価を改めて、競合が増えるのがイヤだった」。永井本部長はあえて夏に石川の視察には出向かず、他球団に対して“無関心”を装っていたという。ただ、結果的には中日、オリックスとの競合の末に抽選を外れ、石川を逃すことになった。

野手陣の高齢化でドラフトのポイントは野手に、佐藤は「右の上林のような感じ」

“外れ1位”として指名したのは、右打ちの外野手である佐藤だった。もともと、ソフトバンクは1位で石川を獲得できた場合、2位で佐藤を指名するシミュレーションしていたという。JFE西日本の河野や創志学園の西といった前評判の高かった選手もまだ残っていたが、「佐藤は他球団の評価も高く、ウエーバーでウチの順番まで残っていないかもしれなかったので、繰り上げて1位で指名した」と佐藤の指名に踏み切ったという。

 ソフトバンクにとって、今ドラフトのポイントはやはり野手だった。永井本部長は「ウチの編成を見ると、野手の年齢層がかなり上がっている。佐々木は素晴らしい素材でしたけど」という。確かに内川が37歳、松田宣と川島が36歳、明石が33歳になった。柳田も31歳となり、中村晃も11月に30歳となる。今宮ですら28歳だ。

 2017年のドラフトでは増田珠ら、2018年には野村大樹らと確かに若い選手を加えているが、どこまで成長してくれるかは未知数だ。野手の高齢化、そして右の外野手不足という現状のチームのニーズを考えると、佐々木や奥川をはじめとする投手の指名はそれにはマッチしなかったということだ。

 こうして1位で指名することとなった佐藤について、永井本部長は「いいですよ。右の上林のような感じ。足と守備、肩はすぐに1軍でも通用するクラス」と高く評価する。バッティングはまだ荒削りながら、パンチ力はあり、俊足強肩だという。王貞治球団会長も「過渡期に来ている」と語っていたソフトバンクの野手陣。佐藤ら若鷹がチームを変革する存在となれるか、今から楽しみだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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