<ブレーク盤>水谷果穂『深呼吸』 優しく爽やかな初アルバム

水谷果穂『深呼吸』

 1997年静岡県出身で、近年はドラマ『義母と娘のブルース』や『凪のお暇』にも出演している俳優兼歌手の初アルバム。付属のフォトブックでは、様々な表情を見せ、さすが女優という感じだが、音楽の方は至って素朴だ。

 CDは、ボーナスを含む全13曲を収録。穏やかなミディアム・バラードの『朝が来るまで』では優しく、アニメ『若おかみは小学生!』の主題歌に起用された可愛い雰囲気のエールソング『君のステージへ』では明るく、と歌い方を変えるが、決して派手ではなく、どれも優しく爽やかだ。声質的にはZARDやMy Little Loverを想起させるが、曲調は90年代J-POPと比べてもシンプルで手作り感がある。それゆえ、過去の幼かった自分に声をかけてあげるような『タカラモノ』や、若者特有の友情と恋の狭間を歌った『あしあと』などのピュアな楽曲も自然に聞こえる。殺伐とした世の中では、逆にこれが個性なのかもしれない。

 DVDには、自然の景色での『朝が来るまで』と、コミカルな演出をした『気まぐれ王子様』の2種のビデオを収録しているが、爽やかな音楽性は一貫している。透明に近い彼女の音楽を聴いて、何かを足したくなれば、それが聴き手自身の個性だと気づくはず。

(ワーナー・CD+DVD+フォトブック初回限定盤4800円+税)=臼井孝

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