激闘稲垣を総括 世界驚かす原動力に W杯ラグビー日本大会

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スコットランド戦の前半25分にトライを決める稲垣。献身的なフォローが結実した=13日、日産スタジアム(長岡支社・新井田悠撮影)

 「相手ボールのスクラムにプレッシャーをかけて、ティア1(強豪10カ国・地域)からもペナルティーを取れると証明できた」。ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会の準々決勝から一夜明けた21日の会見で、チームのベストプレーを尋ねられた稲垣啓太(パナソニック・新潟工高出)は迷わず、アイルランド戦でのスクラムを挙げた。

 元日本代表の長谷川慎コーチの下、1センチ単位まで組み方にこだわったスクラムは、相手から反則を奪えるほどまでに強化。スクラムの最前線で体を張る稲垣は大会前、「日本の武器」と語っていた。

 アイルランド戦前半35分ごろの相手ボールスクラム、FW8人が一体となった押しで相手を突き崩した。世界が驚く大金星を挙げる原動力になり、稲垣も「W杯で一番自信を得た瞬間」と振り返った。

 ただ、南アフリカ戦では前半3分のファーストスクラムで後退させられ、相手に先制を許す要因に。「南アは強みを前面に出して得点した。(日本も)セットプレーを継続して向上させる必要がある」。W杯でもう一段上のステージに進むための課題を指摘した。

 規格外の運動量に裏打ちされたサポートも光った。味方が捕まれば、いち早く駆けつけ「ジャッカル」を試みる相手を排除。ボールを動かすテンポが生命線となる日本のラグビーを下支えした。

 スコットランド戦では、この「下働き」が代表初トライにつながった。前半25分、タックルされながらの「オフロードパス」でつないだ波状攻撃を最後までフォローし、ゴール中央に飛び込んだ。本人は「(トライは)たまたま」と、そっけなかったが、泥くささを売りとする稲垣のトライは、8強入りが懸かった大一番で仲間に勇気を与えた。

 プレー以外にも成長が見られた。チームには主将以外に複数のリーダーがおり、稲垣もその1人。「ただやるだけで良かった」4年前とは立場が異なるといい、試合中、仲間とコミュニケーションを取る姿がたびたび見られた。特に開幕のロシア戦、選手は緊張で浮き足立ったが、プレーが途切れるたびに声掛けして落ち着かせ、「それで後半に修正できた」と胸を張った。

 稲垣は世界最高の舞台で強豪国のプロップ以上の力を示した。誰もが日本の「不動の1番」だと納得しているのではないか。

(運動部・鈴木孝哉)