偽書「万歳三唱令」、安倍首相の所作で再注目

©株式会社熊本日日新聞社

「即位礼正殿の儀」で万歳三唱する安倍首相=22日、宮殿・松の間(代表撮影)

 22日に皇居・宮殿で行われた「即位礼正殿の儀」。安倍晋三首相が国民を代表して発声した「万歳三唱」の手のひらの向きが、ネット上で話題を呼んでいる。熊本が発祥の地とされるニセの太政官布告「万歳三唱令」の動作に似ていたためだ。平成初めに創作された万歳三唱令だが、約30年かけて全国に広がり、令和の時代も変わらず存在感を示しているようだ。

 安倍首相は正殿の儀で、高御座[たかみくら]に立たれた天皇陛下に祝辞を述べて万歳三唱。この際、両腕を真っすぐ上に伸ばし、手のひらを内側に向けていた。

 一方、断髪令、廃刀令と並ぶ“明治三大布告”との触れ込みで出回っている万歳三唱令による万歳は、(1)発声と共に右足を半歩前に出す(2)両手を垂直に挙げ、手のひらは正しく内側に向ける─などと定める。首相の手のひらを内に向けた動作がこれに類似しており、SNS(会員制交流サイト)では「正しい万歳」との評価とともに、「万歳三唱令は偽書」との指摘もある。

 熊本日日新聞は昨年2月、匿名の3人が「自分たちが万歳三唱令を創作した」と名乗り出たと報道。3人によれば、三唱令の動作は1985(昭和60)年頃に酒席の一発芸として生まれた。平成に入り、いたずら心もあって文書を作り、「正しい萬歳[ばんざい]三唱を普及する国民会議」を名乗って“PR”に努めた。もともと熊本市を中心にした仲間うちのお遊びだったが、いつの間にか全国に流行。3人が活動をやめて20年以上たつ現在まで、世の中に広がっている。

 安倍首相が万歳三唱令に影響されたかどうかは不明だが、創作者の一人で合志市の元公務員Aさん(76)は22日の首相の万歳をテレビで見て、「お、やってるな、って思いましたよ」と感慨深げ。ただ、「足は出てなかったね」とちょっぴり残念そうでもあった。(宮下和也)

(2019年10月24日付 熊本日日新聞朝刊掲載)