れいわ・N国党―国政政党の代表が国会議員でないことは今後の政治・選挙を変えるのか(オフィス・シュンキ)

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7月の参院選で、国政政党としての政党要件を満たした「れいわ新選組(以下、れいわ)」と「NHKから国民を守る党(以下、N国党)」。両党の代表に注目してみると、れいわの元参議院議員・山本太郎氏は同参院選で落選したため同党が政党となるのと同じくして国会を去っています。同じくN国党の立花孝志氏は同選挙で当選し参議院議員となりながら10月に入り「参議院埼玉県選出議員補欠選挙(以下、参院埼玉補選)」に立候補したことで失職しこちらも現在は国会議員の籍を失っています。
両党とも代表が国会議員でなくなりましたが、れいわの国政議席は特定枠を使って当選し話題となった2議席。またN国党は立花氏に代わって参院選で次点の浜田聡氏が繰り上げ当選となる見込みで、衆議院議員の丸山穂高氏と合わせて国政2議席であることには変わりありません。
今回は国政政党の代表が国会にいないことの意味やそのことがもたらす政治・選挙の在り方への影響について考えてみたいと思います。

「政党代表が国会議員でない」ということ

れいわの山本氏は9月から全国を遊説しており、N国党の立花氏は参院埼玉補選の真っ最中と、両党の代表とも国会という政治の現場でなく、選挙や有権者に対するアプローチを軸とした活動を行っています。
他の政党要件を満たしている国政政党の代表やそれに準ずる者は、共同代表を置いている「日本維新の会」も含め、衆・参のどちらかに所属しています。「日本維新の会」はもうひとりの代表、松井一郎氏が大阪市長を務めており、参議院議員である片山虎之助氏が共同代表を務める形で、両者ともに公職に就いています。

れいわ新選組・山本太郎氏の全国ツアーを知らせる動画(れいわ新選組YouTubeチャンネルより)

れいわとN国党はどちらも党の代表に就く者が公務としての政治に直接関わることができない立場にあります。これは従来であれば国会での論戦や政局などを報じるテレビ・新聞などのメディアに露出する機会が減ることにつながり、有権者に対する政党・政治家のアピールの場を大幅に減らすことになっていたかもしれません。しかし、全国を遊説し注目選挙への立候補が取りざたされることの多いれいわ・山本氏や参院埼玉補選に立候補しているN国党・立花氏に対する注目は集まったままといえます。
この両党代表が自らの主張や行動を国民に知らせる手段として使用しているのは、YouTubeやツイッターのようなSNS、インターネットツールです。これまでは国会での論戦や記者会見などの模様がテレビ・新聞などのメディアに報じられることで、政党や政治家は自身の認知度の向上につなげていましたが、れいわ・山本氏、N国党・立花氏の両氏ともこの「定石」を破り、かつ注目を集め続けています。

更にいえば政治家が発する情報を多くの有権者へマスコミを介さずに届ける、というスタイルをこの両党の代表は確立しつつあるのではないでしょうか。従来の政党・政治家であれば全国の有権者にアプローチする手段はメディア露出が主でそれ以外は限定的なものでした。しかしれいわ・山本氏、N国党・立花氏については、山本氏は全国遊説・街頭演説を、立花氏はYouTubeを、それぞれ有権者に直接アピールする手段として確かなものにしています。
これはメディアによる報道の在り方を変えるのではなく、従来のマスコミの役割を超えた政治家による情報の届け方を打ち立てているのかもしれません。

他の国政政党の代表やそれに準ずる者は国会議員などの公職に就いています。国会議員であれば国会での論戦など、首長であればその自治体の行政など、当然かもしれませんが、政党の党首としての役割と同じかそれ以上に、活動に占める公務のウェイトが重くなっています。しかし、れいわ・山本氏とN国党・立花氏にはそれがありません。山本氏が国会期間中に全国を遊説して党勢拡大を図ることができるのも、立花氏自身が選挙に立候補したり、地方選挙の応援に入ったりして浸透を図ることができるのも、公職についていないからこそ、といえます。政党の代表やそれに準ずる者の人気、知名度、注目度が高ければ、党のPRや政治マーケティングに注力することで国会や地方自治の現場に直接関わっていなくても、政治認知度を高め党勢拡大が出来る可能性を示しつつあるのかもしれません。

れいわ:山本太郎氏・N国党:立花孝志氏…維新:橋下徹氏との共通点?

過去を見渡すと、国政政党の代表やそれに準ずる者で国会議員でなく、知名度が高い、というのは、れいわ・山本氏、N国党・立花氏が初めてという訳ではありません。
そのさきがけともいえるのは日本維新の会の創設者のひとりでもある橋下徹氏です。弁護士としてテレビ出演などで人気を博した橋下氏は2008年の大阪府知事選挙で当選以来、2015年暮れに「政界引退」を宣言して大阪市長の座を退くまで、地方政治に携わりました。「維新」の結党以来、橋下氏が国会議員となることはありませんでしたが、国政政党となってからも党の指導的立場にあったことは確かです。「日本維新の会」(2012年)創設時から、紆余曲折を経て現在も続く「日本維新の会」まで、橋下氏がその人気を背景に党への影響力を持っていたことは否定できません。
また、橋下氏は、地方にこだわりました。自らが創設した「維新」が合流や分裂を繰り返し「日本維新の会」、「維新の党」、「おおさか維新の会」などと名前を変えていく中でも、大阪市長の職から離れることはありませんでした。「日本維新の会」の母体となる地域政党「大阪維新の会」が地方分権の柱として掲げた「大阪都構想」、ひいては「道州制の導入」が橋下氏の行動の根幹となり、これを実現させるため国政政党が必要との判断から、国政にも乗り出しています。

れいわ・山本氏、N国党・立花氏は、橋下氏と異なり、ともに地方政治に対するこだわりは表明していません。特に、N国党・立花氏は自らの動きについて、「橋下徹さん(「日本維新の会」創設者のひとり)の真似をさせていただいている」と、インタビューや自身のYouTubeチャンネルで公開する動画などで述べていることなどから、「橋下徹」という存在を念頭に置いてのものであることがうかがえますが、あくまで表出の方法であり、政治理念ではないのは明らかです。

政党PRや政治マーケティングの点でも、橋下氏とれいわ・山本氏、N国党・立花氏は異なります。日本の主要都市の首長という決定権を持つ公職についていた橋下氏は、公務がある日、主に記者クラブに在籍している記者、報道機関を相手に行われる記者会見および取材で、質問に答える、という形で、政党の代表としての発言も行いました。これが報道されることで、結果的に政党、あるいは政治活動に結びついていましたが、決定権を持つ公職に就いていないれいわ・山本氏、N国党・立花氏には、そういう場はありません。自ら話題を提供しない限り、既存メディアを通じての政党、あるいは政治活動は成立しにくいというのも事実としてあります。

立花孝志氏が参院埼玉補選に際して配信した動画(立花氏のYouTubeチャンネルより)

YouTubeやツイッターのようなSNS、インターネットツールをこの両党の代表が進んで用いるのも、それゆえに当初は必要に迫られた部分があったように思われます。そして、その方法に一定の注目が集まった結果として「政治」の現場に直接関与していなくても、「政治」の訴えができ、「選挙」運動さえできる、という可能性を提示することになった、といえるのではないでしょうか。背景には、既存政党とともに、既存メディアへの国民の不信感も見え隠れしているように思われます。

2つの「新興」政党はこれからの政治マーケティングの姿を変えるか

N国党・立花氏は選挙を自党のPRの場としても位置付けるとともに自身が公開する動画で「政治と選挙の分離」を公言し、参院埼玉補選への立候補を巡る中で国政選挙の比例代表制の繰り上げ当選を用いてそれを体現している最中です。
また、れいわ・山本氏も、立花氏と手法や狙いは全く異なるためあくまで結果論かもしれませんが、党所属の国会議員が担う「政治」の側面と、山本氏が党の代表として全国遊説などで図る有権者とのコミュニケーションや国政補選や知事選への立候補の可能性、衆院選を見据えた行動など「選挙」の側面とを比例代表の特定枠を用いて分離した、とも言えます。

国政政党の代表が国会議員でないこと、ひいては「政治」と「選挙」の分離はこれからの政治や選挙、政党のあり方を変えていくのでしょうか。日本の政治マーケティングはいま大きな転換期にあるのかもしれません。