BEAMSがアイヌ工芸を販売!若手作家たちの試行錯誤の姿を追う

NHK総合で10月25日に放送される「北海道クローズアップ」(金曜午後7:30、北海道ローカル)のテーマは「アイヌの美 わたしの表現 ~阿寒 工芸作家の挑戦~」。北海道の若手アイヌ工芸作家たちが、人気のセレクトショップ「BEAMS」で販売する新商品作りに懸ける思いや、デザインに試行錯誤する姿を見つめる。

今月半ば、「BEAMS」でアイヌ文様や伝統技術を取り入れた雑貨や服飾品の販売が始まった。同社が2003年から始める、“デザインとクラフトの橋渡し”をテーマに、日本を中心とした伝統的な手仕事と新旧デザインを融合するスタイルを発表する「fennica(フェニカ)」という企画の一環で、阿寒のアイヌコタンで生まれ育った女性は、伝統的な刀帯をアレンジしたブレスレットを制作。また、アイヌ文様や木彫りの熊に魅せられたジュエリー作家は、新たな指輪のデザインに挑んだ。作品に込められた、アイヌの美、アイヌへの思いとは? 同番組では、若手作家が表現を追い求める姿を伝える。ナレーションは浅野里香アナウンサー。

【担当ディレクターS 取材後記】
阿寒を初めて取材で訪ねたのは、昨年の晩秋。ブレスレット、かごバック、シルバージュエリー、巾着袋にバターナイフ…伝統的な文様や手仕事の技を生かしながらも、普段使いできる商品の方向性が固まり、試作が始められていた頃です。今年8月末に納品するまでおよそ9カ月、折にふれ、作家さんたちの制作の様子を見させていただきました。その中で、“時の流れ”を意識することが多くあったように感じています。

アイヌの手仕事には、圧倒的な手間暇を要するものがあります。特に、織りものや編みものは、植物から繊維をとり、乾かし、糸を一本一本手紡ぎするところから始まります。しかも、家族や身の回りの人などのために、好きなときに好きなだけ時間をかけて作る…「コスパ」「効率」「時短」などという概念からは真逆にある世界。だからこそ織り成される美しさがあります。

そんな糸作りに取り組んだ郷右近富貴子さんは、今とは違う時の流れを「豊か」という言葉で表現されていました。「(植物の繊維から糸を紡ぐ作業は)今では面倒くさいことのように思えるけれど、昔の人にとっては当たり前で、手間とも思っていなかった。淡々と心静かに瞑想状態で手を動かす。豊かだなと思います。」毎日の家事や仕事に追われる中、糸づくりに集中する時間を捻出しようと苦心していた富貴子さんは、よく話してくださいました。

番組の中では紹介しきれませんでしたが、富貴子さんが編むブレスレットの縦糸に使うオヒョウの木は、昨年亡くなったお祖母様が、40年ほど前、庭に苗を植えておいたものです。「子や孫の代にも材料に困らないように」という願いが込められ、お金には換えられない価値が宿っています。

そんな、もともと商業向きでないものを商売にしようという、ある意味無謀ともいえる挑戦でした。それでも、そこに敢えて挑むのには、「自分が好きでかっこいいと思うものを見てもらいたい」「自らが愛してやまないアイヌ文化を知ってもらいたい」というシンプルで純粋な思いがありました。作家さんたちが試行錯誤して生み出した品々は、果たして、お客さんたちの心をつかんだのでしょうか。ぜひ、番組をご覧ください。

© 株式会社東京ニュース通信社