日産 アリアコンセプトはGT-R超えのスペックながら快適性も超満足|東京モーターショー2019

トルクはGT-R NISMO超え! ベース車両はリーフe+

「電動駆動4輪制御技術テストカー」と名付けられたこちらの車両は、見た目こそ現行モデルのリーフそのものだが、前後に駆動用モーターを搭載したツインモーター車両なのである。ただし、あくまでテストカーとしてリーフがベースとなっているだけであり、リーフのツインモーター仕様が登場するというわけではなく、その向こう側にアリア コンセプトが透けて見えるというのが正しいのだろう。

そんなテストカーのベースとなったのは、62kWhの大容量バッテリーを搭載したリーフe+であり、160kW/340N・mを発生するEM57型モーターを前後に搭載し、システム出力は227kW/680N・mを誇る。この680N・mというトルクはGT-R NISMOをも上回るものである。

トレッドを拡大した以外は、見た目はリーフそのもの

日産 リーフ「e+」(イープラス)[62kWh版] エクステリア・フロント正面

フロントまわりはベース車と同じだが、トーションビームだったサスリアペンションはマルチリンク式に変更され、トレッドも拡大。外観での唯一の変更点となるオーバーフェンダーは、この拡大されたトレッドに対応するための措置とのこと。残念ながらトランクルームを開けることはNGだったため内部の詳細はわからないが、リヤシートは普通に使用することができ、テストカーらしい計器類を除けば、室内は至ってノーマル然としていた。

タイヤは前後異径とするなど、パフォーマンスが期待できる仕上がり

なお、タイヤサイズはリアが235/50R17サイズとなっており、フロントはその外径に合わせてリーフ純正よりもやや大きい215/55R17サイズのコンチネンタル製Ultra Contact UC6を装着していた。どちらかというとプレミアムコンフォート寄りのタイヤとなるが、いくつかのタイヤの候補から選ばれたものだそうで、乗り味が気になるところだ。

リーフオーナーも驚きの4輪制御技術

ツインモーターと聞くとどうしてもハイパフォーマンスモデルのイメージがあるかもしれないが、今回のテストカー最大のウリ(?)は電動駆動車の4輪制御技術である。日産が培ってきた電動化技術、4WD制御技術、シャシー制御技術を統合的に制御することで「もっと爽快な走り」を実現したというのだ。

eペダルも大幅進化! 同乗者はより快適に

半信半疑で実際に乗り込んでみて、最初に体感するのは進化したe-Pedalだ。ご存知のようにアクセルオフで回生ブレーキが利き、慣れてくればブレーキペダルを操作することなく発進から停止までカバーできてしまう技術だが、現在のものは急激にアクセルを全閉すると大きな制動力がかかり、同乗者の頭が揺られるほどの減速Gが発生していた。

しかし、新たな4輪制御技術を搭載したテストカーで同じ操作をしても、ほとんど頭が揺られることがないのである。あまりに違いすぎて思わず「制動力が弱まっているのでは?」と質問してしまうほどだったが、制動力は変わらず、モーターの制御だけで実現しているというから驚くほかなかった。

超自然に制御! リニアな走りにさらに磨きが

日産 ARIYA 東京モーターショー2019

スラローム走行でもドライバーはハンドルを切るだけで車両側が4輪の出力を調整し、メカニカルブレーキも併用して曲がる方向へクルマを誘ってくれる。ベースとなった通常のリーフではリアがブレイクしそうな速度域でも全くその素振りも見せない。もちろんクルマが制御している感もなく、その動作はテストカーに備わるモニターに映し出される情報を見てようやく理解するレベルなのだ。

日産自慢の「4輪制御技術」はウェット路面でも超安定の走り

最後はウェット路面での定常円旋回。一定の速度で一定の舵角を当てたまま進入し、そこからアクセルを開けるという、通常で考えればアンダーしか出ないシチュエーションなのだが、なんとアクセルを開けているにもかかわらず、クルマの軌道は外に膨らむことなく曲がり続けるではないか!

もちろんウェット路面なので、タイヤのグリップ限界を超えたところで外に膨らみだすのだが、それも唐突さは全くなかった。通常、ウェット路面で定常円旋回を続ける場合は絶えずアクセルやステアリングの微調整が必要となるのはご存知の通りだが、そこを完璧に制御してくれているところを見るからに、日産の4輪制御技術は高い完成度を誇っているようである。

アリア コンセプトはGT-Rも驚く制御技術! 市販化に期待大

日産 GT-R NISMO/GT-R Track edition engineered by NISMO 2020年モデル 「NISSAN GT-R NISMO」外装

ツインモーターと聞くと電費への影響も気になるところだが、テストカーを乗る限りかなり綿密にモーターを制御しているように感じられた。そのため、個々のモーターが必要なときに必要な分だけ作動するようになっているだろうから、重量増以外に電費に影響する部分は少ないのかもしれない。ここまで完成度が高いテストカーが存在しているということは、アリアコンセプトが市販される可能性は非常に高そうだ。

【筆者:小鮒 康一/撮影:NISSAN・MOTA編集部】

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