子が不登校、ひきこもり 親同士 「共感」と「学習」の場 「親の会たんぽぽ」30年

親の会通信を封筒に入れる作業をするスタッフ=長崎市出来大工町、親の会事務所

 不登校やひきこもりの子がいる親を支援する「親の会たんぽぽ」(長崎市)が、11月で発足から30年を迎える。親たちが悩みを語り合う居場所をつくり出し、識者の助言を紹介した通信を原則として毎月発行。「共感」と「学習」の機会を提供しながら当事者に寄り添っている。
 10月17日、長崎市の親の会事務所。約10人のスタッフが「親の会通信」を慌ただしく封詰めしていた。たんぽぽの提唱者で神戸大名誉教授の広木克行さん(74)が、親の会の参加者に向けた「助言」が、紙面いっぱいにつづられている。
 「発足当時は手書きだったから大変だった。記録に残しておけば何度でも見返せる」。作業の手を止め、前代表の井形和子さん(82)が言った。
 たんぽぽの前身組織「登校拒否を考える親の会」が発足したのは1989年11月。学校に行けない子どもたちが増えて不登校が社会問題化し、全国で親の組織が生まれ始めていた時期だった。会の集いには当時長崎総合科学大教授で臨床教育学の専門家、広木さんがアドバイザーとして参加。一人一人の悩みや相談事に対して個別にコメントし、それを参加者全員で共有する「グループカウンセリング」を実施した。その手法は現在も続いている。
 井形さんは「気軽に語り合える環境があれば親は追い詰められずに済む。専門家が助言を加えることで解決のヒントが見つかることもある」と語る。
 集いの内容を広く共有するために通信を発行している。共働き世帯が増え、集いに参加できない親たちが増える中、スタッフが広木さんの助言の内容をテープから起こして記載。現在は会員や行政機関、市外の親の会など関係する約200個人・団体に郵送している。
 発足から30年。親同士の自助を大切にしつつ、当事者の経験から共に考えながら互いに学ぶことを続けてきた。代表の古豊史子さん(60)は「弱い部分を打ち明けて、気持ちを理解してもらうことで親たちは元気になる。親たちが『きつくなったら行こう』と思えるような居場所であり続けたい」と話している。

◎26日に記念事業

 親の会たんぽぽは26日午後1時半~4時半、長崎市桜町の県勤労福祉会館で、30周年記念事業を開く。不登校がテーマのパネルディスカッションで、当事者の親たちが自身の経験を語るほか、広木さんが「不登校のわが子と生きる親たちに学んで」と題し講演する。参加費千円。問い合わせは古豊さん(電090.9723.2651)。

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