高級VS格安?激戦!北海道のパン市場

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今週のけいナビのテーマは「パン」。
北海道で開かれるパンのイベントは軒並み大盛況で、ブームは衰えを見せていない。そんな中、「多様化」も一段と進んでいる。
まずは、日常的に食べるパンとは少し異なる戦略のパン店を取材した。

先月、新千歳空港にオープンした「パスコ北海道プレミアム」。札幌と江別に直営ベーカリーを持つ、製パン大手・敷島製パンの新業態店舗だ。狙うのは「お土産需要」。価格は、街中のベーカリーに比べるとかなり高めだが、客足は途切れることなく、次々と売れていく。

原材料はすべて北海道産で、この店でしか買えない限定商品だ

店頭に並ぶパンは、約50種類。小麦の「ゆめちから」をはじめ、様々な具材はすべて北海道産だ。さらに、すべてのパンが、この店でしか買えない限定商品。中でも注目を集めているが、「北海道ししゃも巻き」。

「北海道ししゃも巻き」は1日約120個売れる、人気ナンバーワン商品

「パンに合う食材」ではなく、「北海道らしい食材に合うパン」を目指して開発した結果、見た目のインパクトも抜群の商品が出来上がった。1日に約120個を販売する、人気ナンバーワン商品。「北海道土産にパン」という戦略。滑り出しは上々だ。

パンブームの代表的な存在、「高級食パン」。激戦区の札幌に、今月、新たなブ
ランドが登場した。北海道初上陸、大阪の嵜本(さきもと)だ。

「高級食パン」激戦区の札幌に、大阪から刺客が

販売する食パンは、ナチュラルとミルクバターの2種類のみ。通常の食パン2斤分が1本で、1,000円近い。

2018年に大阪でオープン。全国に10店舗を構える(取材時)

厳選した素材とこだわりの製法。「食パンはこういうもの」という認識を覆す、新しい味と食感を提示したのが、高級食パンだ。1日に作るのは、2種類合わせて350本。2~3本と購入する客も多く、午前中には売り切れている。
運営するサン・マネージメントの安部舞香さんは「既存店だけでは販売数が限られてしまうので、市内でのサテライト店(製造しない販売のみの店)や道内の地方都市への出店も検討している」と話す。

両手に食パンを抱えて帰る客も少なくない

「高級食パン」という「非日常感」のある新しいカテゴリーのパン。日常的な購買につなげるために必要なことは何か。業界の事情に詳しい、パンコーディネーターの森まゆみさんは、「そのまま食べてもいいというのが、店側の今の提案だが、それぞれの消費者が家庭でおいしく食べる方法を考え、食材と合わせて食卓を豊かにしていくことが必要」と話す。

こうした「高級パン」ブームを、町のベーカリーはどう見ているのだろうか。
札幌市白石区にある「チャーリー」。2013年にオープンした、人気のベーカリーだ。

チャーリーは種類の豊富さが特徴。同じ規模の店の2倍近いという

特徴は、種類の多さ。同じ規模の店の2倍近い、約100種類のパンが店頭に並ぶ。それだけの種類のパンを作るのは大変だが、1日の売り上げは14~15万円と、一般的なベーカリーをはるかに上回る。オーナーの吉野達也さんは、15年の修行の後に独立したパン職人。高級食パンブームを「自分が作るパンとは、まったく別のカテゴリーのパン」と話す。

「高級食パンは、お土産とか、あの袋、あのブランド力、というものを買いに行ってるのかな、と思う」と分析する。では、あまり意識していないのですか?と聞くと、「意識はした。意識して試作したが、コストが高く、毎日のために食パン一斤で300円以上出してくれるか考えると、それだけの付加価値を見出すことができなかった」とのこと。

店ごとにさまざまな工夫をこらす中、「高級」とは正反対の戦略を取る企業が。
お昼時になると、スーパーの中にある100円ベーカリーには、次々と客がやってくる。

コスパ抜群で大人気の100円パン

手掛けるのは、札幌に本社を置く「北海道サンジェルマン」。コープさっぽろやダイイチなどのインストアベーカリーとして、道内70店舗を展開する。主力ブランドは「レフボン」。そして、7年前から手掛けるのが100円ベーカリーの「サンヴァリエ」だ。田中宏明社長をはじめとした幹部社員が、2012年、100円パンが広がっていた関西を視察し、コストダウンの工夫などを調査。視察から8か月後に1号店をオープンした。現在、サンヴァリエは、レフボンからの転換を含めて14店舗ある。

100円でパンを提供するため、コスト削減を徹底する。まずは、レジを通した後の商品を、客に袋詰めしてもらう。これでレジの人員を削減できる。加えて、パンを詰める袋は、一番薄いタイプを採用。手提げ用の袋も、店のロゴや色を入れないものにしてコストを圧縮した。

さらに、製造方法にも秘密が。

各店舗で粉から生地を練り上げる。その方がコスト削減につながるのだという

大手チェーンなどでは、店舗とは別の工場で冷凍生地を作り、店内で焼き上げる方式をとっているところも少なくないが、サンジェルマンでは、各店舗が粉から練り上げて作っている。物流などの経費を考えると、この方がコストが低いのだという。レフボンから低価格のサンヴァリエに転換した店では、売り上げは少なくとも2倍以上に跳ね上がる。

原材料費や人件費の上昇が続く中、100円ベーカリーをどう継続していくかは大きな課題だ。そこで導入したのが、「150円パン」。先月中旬、店頭に並ぶ商品の約2割を、新商品として入れ替えた。田中社長は「他の店では250~300円するパンが150円で買える。そういう商品の幅を広げることで、新しいお客さんを増やして、薄利のままで多売をもっと多売にする」と語る。

北海道を代表する地元ベーカリー「どんぐり」。「どんぐりらしさ」は維持しながら、新しい取り組みにも挑戦しようとしている。

今や全国津々浦々にまで広がった「ちくわパン」を生み出したベーカリーとして知られる、どんぐり。現在、札幌と江別に9店舗と決して多くはないが、1年間にレジを通過する客の数は、延べ450万人にも上るという。

全国にも知られるようになった「ちくわぱん」

札幌近郊に根差した店として、新たな取り組みを始める。農家での収穫から、パ
ン教室までセットの体験だ。野尻雅之社長は「客がどんぐりを通して、パンを買う以外の体験ができるようにしたい」と話す。これまで、より品質の高いパン作りを追求してきたことが客に評価してもらえているからこそ、新しい取り組みに踏み出せるという。この冬には、第一弾として、雪の下で寝かせたキャベツを掘り出す体験ができないか検討している。

ベーカリーにとって、定期的に新商品を出すことは重要。どんぐりでは、各店舗が独自に新商品を開発している。アイデアを出すのは、すべてのスタッフ。毎月提案するパートさんもいるという。発売したものの、売れ行きが思わしくなく販売を止める商品もあるが、年間約500種類の新商品が生まれている。

スタッフの提案から新商品が生まれる

どんぐりは、総菜を店内で一から作っている。そんな中から生まれた大ヒット商品が「ザンギ」。この味付けも、あるスタッフの家庭の味がベースになっているという。もともとはパンにはさんだ形で販売していたが、「ザンギだけほしい」という客の声を受けて、試しに販売したところ大当たり。どんぐりの人気1位は「ちくわパン」、そして2位は、なんと「ザンギ」なのだ。

どんぐりの人気2位はパンではなく「ザンギ」

「総菜づくり」と「出来立ての提供」という2つの強みから、「おむすび店」という新しい事業のアイデアもある。来年の春には、形にしたい考えだ。これまでは「客離れにつながる」と考え値上げを避けてきたが、野尻社長は「時代が変
わってきていて、もっとちゃんとした価格で買ってもらえる会社、パン屋さんになっていかなければいけないという時代に入ってきたと思う」と話す。社員・スタッフの頑張り、商品の質に見合う価格設定を見直す考えだ。

同い年の鈴木ちなみさんと磯田彩実アナ

「高級」「格安」「地元密着」など、それぞれの戦略で成功しているパン市場。活況はまだ続きそうだ。

番組の最後は鈴木ちなみさんの一言。コメントのフルバージョンはYouTubeなどのSNSで公開中。
(2019年10月26日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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