阿部は「名監督になれる」元巨人スコアラーが分析 投手、野手の起用の特徴は?

巨人・阿部慎之助【写真:Getty Images】

阿部を入団時から知る元巨人スコアラーの三井康浩氏が分析 捕手目線&原野球の融合

7年ぶりの日本一を目指した巨人だったが、日本シリーズでソフトバンクに4連敗を喫し、今シーズンを終えた。今季限りでの引退を表明している阿部慎之助捕手は第1戦に本塁打を放つなど躍動したが、最後を日本一で飾ることはできなかった。今後は指導者としての道を目指すことになるが、入団時から阿部を見てきた元巨人の名スコアラー・三井康浩氏は「名監督になれる」と太鼓判。その真意と秘話を聞いた。

 阿部選手、長い間、お疲れ様でした。入団してきた時は本当にすごい選手が入ってきたと思いました。これまで、スコアラーとして松井秀喜選手や高橋由伸選手らを見てきましたが、手首の柔らかさ、ボールをアジャストする能力、内外角のさばき方は阿部選手の方が2人より、上だと思っています。

 ミーティングでは私も何度もみんなの前で話をしましたが、阿部選手は打者ミーティングだけでなく、バッテリーミーティングもこなさなくてはいけなかったため、慣れない入団当初は大変だったと思います。

 この先のジャイアンツのことを考えると、阿部選手には、早く監督業に就いてほしいと思います。喜怒哀楽が出る監督になるんじゃないかと思います。監督が明るいとベンチ全体が明るくなる。その明るさで打者たちを楽に打席に送り出すように心がけるのではないでしょうか。

 バッティングはいい時もあれば、悪い時もある“水モノ”と割り切っていた部分もありました。ただ、阿部選手は不振の時期が少なかった。わざと打ち方を変えてみたり、誰かのフォームをマネしてみたり…。それで打てなくても、また違うフォームに挑戦。ただ、技術的に“ここだけしっかりしていれば大丈夫”というポイントを抑えていたので、元に戻ることができた。1軍の選手へのアドバイスは自分がぶれてはいけないポイントを覚えさせ「大丈夫、打てる、打てる」などと気持ちが楽になるように仕向けていくのではないかと思います。

投手起用は細かくなる 変則左腕ら一芸に秀でた選手を起用する

 逆に投手に関しては厳しい指導になるんじゃないかと思います。阿部選手は投手のことをよく考えている捕手。試合はピッチャーが“絶対”と思っている。投手整備は先発、中継ぎ、抑えときっちりしていく。他にも、中継ぎも特徴のある選手を起用していくんじゃないかなと思う。絶対的なスライダーを持った投手とか、変則の左投手とか…。一芸に秀でた投手を打者によって使い分けると思う。

 下位打線には、まっすぐでどんどん押す投手。クリーンアップは変化球を扱える投手をぶつけてきたりする。捕手は、流れを特に感じながら、リードをしないといけないから当然、リリーフの使い方も知っている。投手コーチに任せっきりになるのではなく、型にはめず、自分で流れを読むと思う。

 戦術に関しても、捕手の目線が生かされたものになると思う。まずは得点圏に走者を進めて…みたいな型にはまらない野球をするんじゃないかな。西武で黄金期を築いた森祇晶さんも捕手でしたが、巨人のV9の手堅い野球を西武でもやっていた。阿部選手は原辰徳監督のやっている野球を自分と置き換えて見ていたはずなので、強い原野球に、捕手目線が加わった名監督になると思います。指導者・阿部が非常に楽しみです。(三井康浩 / Yasuhiro Mitsui)

プロフィール
三井康浩(みつい・やすひろ)1961年1月19日、島根県出身。出雲西高から78年ドラフト外で巨人に入団。85年に引退。86年に巨人2軍サブマネジャーを務め、87年にスコアラーに転身。02年にチーフスコアラー。08年から査定を担当。その後、編成統括ディレクターとしてスカウティングや外国人獲得なども行った。2009年にはWBC日本代表のスコアラーも務めた。松井秀喜氏、高橋由伸氏、二岡智宏氏、阿部慎之助選手らからの信頼も厚い。現在は野球解説者をしながら、少年野球の指導、講演なども行っている。

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