藤井七段も受けていた!「モンテッソーリ教育」をフィンランドの小学校で視察してみた

藤井聡太七段も受けていたという「モンテッソーリ教育」について、それを実践しているフィンランドの小学校にお邪魔したので、その様子をレポートします。

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世界中で活躍する天才たちが受ける「モンテッソーリ教育」とは

プロ棋士の藤井聡太七段や、Googleをつくったラリー・ペイジ、Facebookのマーク・ザッカーバーグ……これら世界中で活躍する天才たちは、幼少期に「ある教育」を受けていたことで有名です。その教育とは「モンテッソーリ教育」。医師であり教育者であった、マリア・モンテッソーリが考案した教育法です。

には以下のように書かれています。

  • モンテッソーリ教育の目的は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことです。
  • 「子どもには、自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」の存在がモンテッソーリ教育の前提となっています。

キーワードは、「自己教育力」です。子どもが自ら学ぶ力を最大限に活かすために、「環境」と「教具」に徹底的にこだわります。この教育法の効果の高さは、教育学や心理学だけでなく大脳生理学の観点から見ても証明されています。現在では、140カ国以上の国で取り入れられている教育法です。

フィンランドのモンテッソーリ教育実践校を見学

そんなモンテッソーリ教育を実践する、フィンランドの小学校に行ってきました。フィンランドはほとんどの学校が公立です。今回視察した学校も公立小学校です。モンテッソーリ教育は、誰でもできるわけではありません。モンテッソーリ教育を体系的に学び、資格を取得した先生しか実践できません。

この学校では、モンテッソーリ教育の資格をもつ先生が1人だけいました。たくさんの学級のうち、低学年のある1クラスだけでモンテッソーリ教育が実践されています。フィンランドの学校では現場の先生の裁量権が非常に大きく、一定の条件さえ満たせば指導方法は教師に委ねられているので、モンテッソーリ教育も公立小学校で実践できます

実際にモンテッソーリ教育を実践する、低学年のクラスを見学しました。モンテッソーリ教育が実践される教室は、個性的な教室が多いフィンランドの学校の中でも、ひときわ特別な空間です。

モンテッソーリ教育の1つめの特徴として、「学びの環境」を徹底して整備します。グループワークに適した場所や、個人ワークに適した場所、読書をするのに適した場所まで、目的に応じて使い分けられるような環境設計がされています。

五感で学べる、魅力的な教具たち

モンテッソーリ教育の2つめの特徴は、さまざまな教具です。「感覚教育」と呼ばれる手法で、文字や論理だけでなく「五感で学ぶ」ということが意識されています

いくつか教具を紹介しましょう。たとえば下の写真の教具は、算数の「図形」で使われる教具。

  • 9種類の模様が描かれたプレート
  • 9種の模様を1つにまとめたボード

この2つでセットの教具です。色のついた図形の部分がざらざらしています。

使い方は、

一般的に図形は「視覚的」に学ぶことが多い。しかしモンテッソーリ教育では、このように五感すべてを使いながら学ぶことが特徴的です。

図形だけでなく数字の教具もあります。下の写真は、数字の大きさを「手にとって確かめられる教具」です。

「1000という数字は、1が1000個集まったもの」という概念自体は、どの国の小学校でも学びます。しかしこの教具を使えば、想像するだけでなく実際に「1000」に触れます。低学年は面積や体積の概念はまだ学びません。でもこれで慣れておけば、正方形や立方体を学ぶ際にもイメージがしやすくなりそうですね。

先生が心掛けていること

見学の終わりに、先生にいろいろな質問をしました。最先端の電子教具の紹介や、iPadの活用事例など、さまざまなことを教えてくれました。中でもいちばん印象的だったのは「このような通常とは異なる教育をする上で、心がけていることはなんですか」という問いに対する回答です。

「保護者たちと徹底的に話し合うこと。どのような意図でこの教育法を行なっているのか、家庭でも意識してもらいたいことはなんなのか、どのような目的で毎日の宿題を出しているのか。このような点を保護者とすり合わせて、学校と家庭で協力して子どもたちの教育にあたります。そのためにも専用のソフトウェアを使って保護者とは綿密に連絡が取れるようにしていますよ。また、年度初めにある保護者説明会は非常に重視しており、そのときは徹底的に話し合いをします」

道具よりも「信頼関係」

はじめに見たときは、かわいい教具や大きな教室ばかりに目がいきました。しかし先生と話せば話すほど、教育とは「信頼関係」や「コミュニケーション」といったような目に見えない部分のほうが重要だと感じました。どんなに優れた道具があっても、やはり基礎となる人間関係は押さえておかなければならないということも、同時に学べました。

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