「コンビニ、全店で24時間営業する意味はない!」「セコマ」丸谷智保社長 独占インタビュー(上)

 人手不足による24時間営業の是非、キャリア決済の導入、ドミナント戦略によるチェーン間の地域競合-。
 成長をたどってきたコンビニエンスストアも、ここにきて多くの問題が顕在化している。なかでもスタッフ不足に起因する「24時間営業」は、オーナーの過労死や自殺などにも関連付けられ、社会問題になっている。東京商工リサーチは、北海道のコンビニ業界で圧倒的な強みを持つ「セイコーマート」を運営する(株)セコマ(TSR企業コード:010158766、札幌市)の丸谷智保・代表取締役社長に独占インタビューした。

-24時間営業の是非が高まっている

 まず、直截的(ちょくせつてき)に言えば24時間(H)営業はする必要がない。全部の店舗でする必要はない、と言った方が良い。例えば、地方の人口2、3万人の街でも、全店24H営業する必要がありますか、という話だ。だから全国展開しているチェーンはどこでも当てはまる。
 毎年行われている「JCSI顧客満足度調査」がある。たくさんある項目の中に“地域のニーズに合った営業時間を設定しているか”という設問もあるが、各チェーンの中でセイコーマートが一番高い。24H営業していないのに。この結果からも、セイコーマートの営業時間は、利用者にとって「不満足ではない」ことが示唆されている。

-各社24H営業しなければならない理由は?

 フランチャイズ(FC)本部の売上の問題が大きいだろう。FC本部にとって、基本的に店舗の営業コストは関係ない。コストは店舗の話だから。売上があれば、その分、本部にロイヤリティーが多く入ってくる。しかし、今、FCが苦しい状態、苦しいから24H営業を辞めたいFCも出てきた。上昇する人件費の負担も大変になっている。

-他チェーンではドミナント出店による売上の減少を危惧する既存店がある

 うち(セコマ)の場合は、基本的に、既存店の半径150メートル以内には出店しない。ドミナント戦略はフランチャイジーに「テリトリー権を認めていない」ことと同義で、本来のFC制度の根幹である本部と加盟店の“対等な関係”とは異なる。
 これはオーナー側にとっては、有利にならないものだろう。例えば、ある地域の店舗が1日100万円の売上がある。その店のすぐ隣にもう1店出せば、頑張れば既存店が売上60万円をあげて、新店も60万円稼げば、地域で合計120万円の売上になる。FC本部にとってみたら、それで売上は20万円増だ。でも、元からあった店(既存店)の売上は従来から40万円分、隣に収奪されることになる。

-ロイヤリティー負担も深刻だ

 大手のFCオーナーはロイヤリティーに頭を抱えている。単純に比較はできないが、うちがロイヤリティー率10%のところ、ある大手は45%だ。24H営業すれば奨励として数%減額されるが。でも、フランチャイジーが生き残るためには35%以上のロイヤリティーを取ってはいけない、という学説もある。なのに大手コンビニはほとんどのケースで35%を上回る。さらに、開業資金がないオーナーに向けては、ハードを本部が用意するから、代わりにロイヤリティーで70%以上になるケースもある。ここから残っている粗利で人件費含め24H、店を回さなければならない。これまではなんとかやってきた。でも、このオーバーストアの現状で、そのひずみが一気に現れてしまった。

-加盟店は価格決定の裁量がなかった

 我々はFCで店舗の展開を始めた当初から、店舗の価格決定の裁量権を残していた。「賞味期限の近い商品は値引きしても構いませんよ」と。FC店にとっては、商品を残してしまうとロスにつながるから。最近になって、大手はロスに一部補助するような取り組みを始めたが、それでもまだ“価格は曲げてはいけない”ことを重視しているように見える。
 本来、加盟店とFC本部は対等。フランチャイジーは小規模企業だ。小さい企業の集まりが、本部と対等な契約を結び、一定のルールに従って(コンビニ各社の)看板を借りている。本部は各店舗の支援に回る。看板を店舗に持たせて、調達・供給を行う。決められた時間に商品を入れる。だから、本来FCは良い制度だった。だが、その運用を間違ったから、あらゆる問題が顕在化した。

-他社に比べて惣菜類が安い

 工夫とサプライチェーンが肝だ。まず、原材料の調達。例えば、あずきは一昨年、昨年と不作だった。以前は1俵2万5000円だったものが、今は4万円以上する。そこをうちは自前の農業生産法人で生産しており、安定した価格で調達できる。野菜も同様。原材料が市場価格に影響を受けない環境を維持することで、安価な惣菜を提供できる。
 次は、生産現場での工夫。ヒット惣菜に“煮卵”(2個110円)があるが、すべて自社で作る。ゆで卵製造機を利用すると、自動で殻も剥いてくれる。だが、この工程で約5%のゆで卵で形が崩れてしまい、煮卵として売るのは難しい。しかし、その崩れた卵は廃棄せず、卵のサンドウィッチやタルタルソースなど、ゆで卵を細かくしたメニューで使用する。だから卵はほぼ100%使用する。ここで5%原価を下げることが可能となる。「使い切る」ことで原価を抑える。ここで差が出る。

取材に応じる丸谷社長(東京商工リサーチ撮影)

‌取材に応じる丸谷社長(東京商工リサーチ撮影)

-他には

 原材料原価を分解する。人気の110円の惣菜を、年間3000万個ぐらい売る。包材費用は相当になる。煮卵は汁漏れ防止のふたをした上にシュリンクすると、13円ぐらいかかる。小売価格118円の商品なのに、そのうち13円が包材なら人件費か材料費を削るしかない。だから、「包材を自前でつくろう」と。
 うちの惣菜の包装は、トレイにおかずを入れ、その上にフィルムシールのふたをするのみ。それで10円近く抑えられた。「どこに無駄があるのか。コストダウンの余地があるのか」を研究した。確かに、見栄えはふた・シュリンクの包装に比べて良くない。でもお客様が食べるのは中身。毎日来てくださる地域密着型の店舗の場合、惣菜の味はお客様がよくわかっている。だから見栄えより、コストの軽減が大事。プラスチック廃棄も少なくて済む。他では真似することは難しい。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年10月21日号掲載「Weekly Topics」を再編集)

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