夢のような現実、今こそ「ONE TEAM」に

ラグビーW杯日本大会 担当記者の思い

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日本がトライを決め盛り上がる観客

 アジア初開催となったラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会は9月20日に開幕して1カ月余りがたち、ついに終盤にさしかかってきた。「果たして日本でラグビーが盛り上がるのか」と世界から不安視され、私もずっと同じ思いだった。ふたを開けてみれば、日本代表の快進撃にも後押しされ、想像以上の熱気に沸いている。

▽南アに勝った夜、感じた感謝と不安

 4年前、ラグビー発祥地で開催されたW杯イングランド大会。日本代表が優勝候補の南アフリカから金星を挙げた夜だった。取材を終えて宿泊先に戻ると、ホテルマンから興奮気味に「おめでとう。これを部屋に飾ってください」と大きな日本の国旗を渡された。以降、街を歩けば祝福の声を掛けられ、パブで飲んでいると見知らぬ人にウォッカを差し出された。日本人であることが誇らしく、チームの努力に感謝の念を抱いた。

 同時に頭をよぎったのは「果たして4年後、日本でも同じような雰囲気が出せるだろうか」という不安だった。帰国後に起きたラグビーブームはあっという間に冷めた。「W杯チケット販売が好調」という記事を何本も書きながら、大会直前まで「本当に日本で開催できるだろうか」「満員に埋まっても盛り上がりに欠けるのではないか」と半信半疑だった。

▽「おもてなし」「おじぎ」…日本らしさ、ふんだんに

 大会が始まってみると、それは杞憂に終わった。日本大会の盛り上がりを確信させてくれたのは、開会式が始まった瞬間だった。ほぼ満員の東京・味の素スタジアムが、大会の開幕を待ちわびたような大歓声に包まれた。ある元日本代表選手と話をすると「僕もずっと信じられなくて。開会式見たときに、ああ本当なんだ、と泣いちゃいました」と明かしてくれた。

 その後は驚きのオンパレードだった。日本のファンが海外チームの国歌を合唱したり、強豪ではないチームに大きな声援が送られたり。そんな「おもてなし」を受けた選手達が試合後、日本式の「おじぎ」で感謝を伝えるシーンが繰り返された。ラグビーW杯という〝輸入品〟を日本で開くだけで終わるのではないか、という心配は不要だった。日本らしさをふんだんに感じさせてくれる大会になった。

ウルグアイに勝利し、観客におじぎするウェールズ代表=えがお健康スタジアム

 8強入りした日本代表の奮闘も素晴らしかった。日本大会はマイナースポーツになりかけていたラグビーをアピールする最大のチャンス。プレーに表れた選手の固い覚悟は「ラグビーを見てもらいたい」という決意と、地元の大声援を受ける喜びに満ちていた。

▽決勝戦は別格、世界最高峰楽しんで

 一方、日本協会に目を向けると、先行き不安なことが噴出している。次期強化体制やプロリーグ構想、海外リーグとの提携・・。内部の意見対立や不和も聞く。日本協会はW杯を控えた6月に会長を含む大幅な体制刷新を図ったばかりとはいえ、このタイミングで「ONE TEAM」にならなければ未来はない。

 大会はいよいよ大詰め。世界のラガーマンが人生を懸けて頂点を争う戦いが、日本で行われる―。そう思いをはせると、再び夢と現実の狭間を行き来する思いだ。決勝戦の緊迫感と迫力は間違いなく別格。ぜひ多くの人に世界最高峰のラグビーを楽しんでもらいたい。(共同通信=渡辺匡)