横浜市大病院、また情報共有不足か 信頼回復の道険しく

会見で謝罪する、横浜市立大学付属病院の関係者ら=市役所

 横浜市立大学付属病院(同市金沢区)で、またも基本的なミスが原因の重大な医療事故が起きた。病院と系列病院は2017年、18年に、院内の情報共有不足から患者が死亡。そして今回、主治医が「動脈瘤(りゅう)が増大している」との記述を見落とした。病院側は再発防止に取り組んでいる姿勢を強調するが、失った信頼回復への道のりは険しい。

 腎臓疾患の疑いがある70代の男性患者の画像診断報告書には、骨盤近くの「内腸骨動脈」で動脈瘤が増大しているとの記述があった。

 腎臓・高血圧内科の主治医はなぜ、重要な記述を見落としたのか。相原道子病院長は会見で、「(動脈瘤は)予期していなかったため、頭の中に残っていなかったとしか言いようがない」と説明。動脈瘤治療が専門の心臓血管外科につないでいれば、経過観察や手術といった選択肢があったとした上で、適切な処置を施していれば「命に関わる事態は防ぎ得た可能性がある」と述べた。

 病院は今回の医療事故を受け、15年10月から18年9月までの3年間を対象に、抽出した動脈瘤に関連する画像診断報告書3753件で、見落としがあったかを調査。今も確認を進めているが、既に未開封が120件に上っているという。

 系列の市大付属市民総合医療センター(同市南区)で17年10月に70代の男性患者が死亡したケースも、市大付属病院で18年4月に60代の男性患者が亡くなったケースも、院内の情報共有不足が原因だった。

 17年10月に発覚した医療事故を受け、二つの病院は16年7月からの1年間に作成された画像診断報告書計1万6千件超を調査。しかし、がんに絞って調べたため、今回のケースを見抜けなかったという。

 病院は見抜けなかった理由について、会見で言葉を並べた。「年間5万件以上の画像を撮影しており、すべての中身を(改めて)確認するのは無理」「できうる最大限の対応だった」

 病院は今後、外部委員を含めた医療事故調査委員会を設置し、原因究明に努めるとしている。

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