日本最大級 オオスリバチサンゴ群を調査 五島市沖、保全目指す 3D映像化も

多々良島の沿岸に生息するオオスリバチサンゴの群落=五島市(上田浩一さん提供)

 長崎県五島市沖で2009年に発見された日本最大級の「オオスリバチサンゴ」の群落について、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの山野博哉センター長とNPO法人OWSが今月、調査を始めた。17日に大きさを測り、年齢測定のためのサンプルを採取。調査は来年まで続け、群落全体の3D映像化も目指す。

 山野センター長によると、オオスリバチサンゴは日本では沖縄から本州にかけての沿岸に生息。5ミリ程度の「ポリプ」と呼ばれる個体が集まり、直径1メートル前後のすり鉢状の群体をつくる。複数の群体がバラの花びらのように幾重にも重なる場合があるが、山野さんは「これほど大きくなるのは全国的にも珍しい」と驚く。
 群落は福江港の北東約6キロに位置する無人島、多々良島の沿岸で、同市のダイビングショップ「マリンサポート五島海友」を営む福見直樹さん(39)が発見した。水深十数メートルの海底にあり、ダイビングスポットとしても人気だ。ただ行政機関による保全策は取られておらず、釣り船などのアンカーが打ち込まれて壊れたとみられる部分もあるという。同市の五島自然環境ネットワーク代表、上田浩一さん(49)は「貴重な群落で、これ以上壊される前に手を打つべきだ」と訴える。
 同研究所は09年から五島沖など全国8カ所で、海水温上昇の影響などを調べるサンゴの定点観測調査を継続している。今回は山野さんらが来島したのに合わせ、環境省五島自然保護官事務所(同市)とも連携してオオスリバチサンゴの調査を実施した。保全に向け、学術的な評価を明らかにする狙いという。
 群落は上から見ると楕円(だえん)形をしており、今回の調査で長径は14.3メートル、積み重なった高さは5.3メートルと判明した。撮影した映像などをもとに3D化すれば、体積も分かるという。採取した骨格の一部を分析し、年齢も明らかにする。
 山野センター長は「長崎県内では五島の他にも、対馬や九十九島など各地に多様なサンゴが生息しているが、沖縄などに比べて保全策が整っていない」と指摘。「サンゴはその場から動けず、環境変化や人為的な影響を受けやすい。観光資源としても生かせるので、まずは県内でのサンゴの認知度を上げ、保護の意識を高めることが必要」と話す。

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