赤ちゃんが泣いて肩身が狭いあなたに  子育てに寛容示す「大丈夫だよ」ステッカー

「ALRIGHT BABY」と書かれたステッカーとキーホルダーを手にする岩城はるみさん

 「電車で赤ちゃんが泣いたら舌打ちされた」。「『母親なんだから泣きやませろ』という目で見られた」。これは、赤ちゃん連れのママたちの体験談だ。筆者も、まだ歩けない娘を連れて東京郊外の実家に帰省した際、電車内でベビーカーを蹴られたことがある。
 一方で、声には出さなくても、ママやパパを応援してくれている人たちもいる。「赤ちゃんが泣いても大丈夫だよ。ベビーカーは邪魔じゃないよ」。そんな気持ちを届けようと、奈良県生駒市のベビーマッサージ講師で2児の母でもある岩城(いわき)はるみさん(37)が、「ALRIGHT BABY」(赤ちゃん、大丈夫だよ)と書かれたステッカーとキーホルダーの販売に取り組んでいる。

 岩城さんは2012年にベビーマッサージ教室を開いた。そしてそこに集まるママたちから「赤ちゃん連れで新幹線に乗るのが不安」「ベビーカーは邪魔だと思われているのではないか」といった悩みや心配の声をいつも耳にしていた。

 「赤ちゃん連れに優しくしよう」。そう伝えられるマークができないだろうかと考えていた時、奈良市のデザイン会社の経営者と知り合った。これがきっかけとなり、17年4月の商品化につながった。

 マークは奈良市にある若草山をイメージした緑色に、赤ちゃんとシカのキャラクターが抱き合うデザイン。円形で直径3センチのSサイズと、5・5センチのMサイズがあり、それぞれ132円と165円(税込み)。キーホルダーは385円で、インターネットなどで販売している。これまでに千個以上を売り上げた。

ALRIGHT BABY」(赤ちゃん、大丈夫だよ)と書かれたステッカーとキーホルダー

 実は、ほかにも同様の取り組みはある。女性向け情報サイト「ウーマンエキサイト」では「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」と銘打ち、「泣いてもいいよ!」と書いたステッカーなどを製作、配布する活動をしている。宮城県や長野県など一部の自治体はこの事業の趣旨に賛同し、地元の方言を使ったオリジナル版を無料で配布しているが、岩城さんはあえて有料での販売を選んだ。「事業を息長く継続させたい」「実際に使う意志がある人に持ってもらいたい」との思いがあるからだ。

 「泣き声を受け入れてくれる人がいると分かり気持ちが楽になった」と話すのは、生駒市の保育士花川(はなかわ)かなえさん(34)だ。長男(3)は2歳すぎまで外出先でぐずることが多く、日用品の買い物も不安だった。泣いたらあやせるよう多くのおもちゃをかばんに詰め、電車もラッシュ時は避けた。

 岩城さんの取り組みを知り、カフェでステッカーが貼ってあるのを見つけたときはほっとした気持ちに。周囲の目を気にせずに済むようになった。

 購入者からは「『大丈夫ですよ』と伝えたくても声を掛けられなかったので、ありがたい」といった声が届く。岩城さんは「子育て中に肩身の狭い思いをすることがない寛容な社会であってほしい。もっと浸透させていきたい」と力を込めた。(共同通信=田中なつみ)

 商品の問い合わせは岩城さんのメールcafekojika@yahoo.co.jpまで

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