「笑わない男」が見せた一瞬の笑み ラグビーW杯

©株式会社神戸新聞社

1次リーグA組第2戦、優勝候補のアイルランドを破り、笑顔の稲垣=9月28日、静岡スタジアム(撮影・後藤亮平)

 「笑わない男」、実は…。ラグビーW杯日本大会で快進撃を見せてくれた日本代表。チーム最前線で体を張り続けた稲垣啓太選手(29)は、インタビューや記念撮影では一切笑顔を見せず、そのキャラが人気だ。

 そんな彼だが、予選1次リーグ第2戦アイルランド戦での勝利には、さすがに喜びを隠しきれなかったようだ。世界ランキング2位(対戦時)と完全に格上の強豪に、真っ正面からぶつかり、耐えて勝利を手にした。体格差をものともせず“本職”スクラムで優位に立ったのも、フォワード第1列「プロップ(支柱)」として格別だったに違いない。まるで子どものような笑みを浮かべている。

 歴史的瞬間に立ち会った記者は、フィールドの反対側から、感情を爆発させる選手、その向こうに総立ちの観客を高速連写。静岡スタジアムを包み込む大歓声が地鳴りのように響く中、夢中でシャッターボタンを押し、稲垣選手の笑みには気づかなかった。

 貴重な瞬間を押さえられたのはこの試合のこのシーンのみ。他の4試合のデータを見ても、どこにも笑顔はなかった。代表初トライの後もムスッ。鋼のような自制心を持つ「笑わない男」、恐るべし。(映像写真部 ラグビーW杯取材班)