世界が称賛したHB芝 負の歴史、変えられるか【大分県】

切り拓け―おおいた新時代 第11部 検証熱狂の1カ月(2)

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昭和電工ドーム大分のハイブリッド芝は激しいプレーに耐え、世界が注目する舞台を支えた=大分市

 突進する選手たちの足元で、ちぎれた芝が舞う。

 ラグビーワールドカップ(W杯)大分開催の最終戦。20日に昭和電工ドーム大分(大分市)でウェールズとフランスが相まみえた準々決勝は、意地とプライドがぶつかり合う大会屈指の好勝負となった。

 両者一歩も譲らず、激しい攻防が続く。熱戦は土壇場の逆転劇で終幕した。

 手塩にかけて育てた芝は、タフな5試合を無事に乗り切ってくれた―。

 グラウンドの隅で立ち会った芝の職人たちは、ノーサイドの笛を感慨深く聞いた。

 開幕直前、県はドームの芝を強度の高いハイブリッド(HB)型に替えた。

 県内初戦(2日)のニュージーランド―カナダ戦でお披露目された鮮緑(せんりょく)のピッチはまばゆく、試合後も芝がめくれ上がるようなひどい損傷はなかった。

 19日間で5試合をこなす過酷な日程。管理する雪印種苗大分スポーツ公園事務所長の高越克史(47)は「ラグビーは選手がステップを踏むだけで表面が剥がれる。感覚的にはサッカーの20倍は傷む」。

 芝は繊細だ。手入れを誤ればすぐに勢いを失う。遠目では分からない細かいダメージを癒やすため、試合の合間に少しでも状態を回復させたかった。

 ドームの屋根を閉じていたのは、好条件で選手に試合をさせたい大会組織委員会の指示だった。

 「少しの時間でもいい。開けることはできないか」。十分な日照量を確保したい県の要望に応える形で、組織委は条件の一部を緩和。試合日や公式練習の時間帯を除き、大分開催の途中から開閉が可能になった。

 世界中の視線を浴びるからには見栄えも整えなければならない。準々決勝の前には、1次リーグの激戦で削れて薄くなった箇所を短期間で面ごと張り替え、均一性を保った。

 「ベストな硬さだ。準々決勝にふさわしい」。試合前日の18日に状態を確かめたイングランドの人気バックス選手(センター)、マヌ・ツイランギ(28)は褒めたたえた。

 ウェールズのスクラムを支えるフォワード選手(右プロップ)、トム・フランシス(27)もフランスとの激戦後に笑顔で親指を立てた。「芝の状態はすごくいい。おかげでいい試合ができた。グッドジョブ!」

 ノープロブレム。素晴らしい舞台だ―。多くのトップ選手が折り紙を付けた。

 ドームは構造上、フィールドの日当たりや風通しが悪い。長い間、天然芝の育成に苦しんできた。

 「大分で躍動する一流選手の姿を世界に発信できたことは大きな収穫になった。誘致できる大会の選択肢が増えたことは間違いない」。HB芝を整備した県公園・生活排水課長の三村一(56)は胸を張る。

 成果を残した一方で、導入には過去4度の天然芝の張り替え総額(約2億4千万円)を超える約2億8千万円が投じられた。管理方法は変わらないとみられるが、維持費の見通しは立っていない。

 そのピッチに世界が太鼓判を押したラグビーW杯は、負の歴史を変える転換点になるのだろうか。