諫早駅周辺再開発事業 栄町東西街区市街地 生き残りへ最後のとりで

先行オープンを祝い、多くの市民で沸いた餅まき=諫早市、栄町アーケード

 九州新幹線長崎ルート建設に伴う諫早駅周辺再開発、道路網や産業団地の整備-。県央の中核都市諫早の姿が大きく変わり始めている。まちの変化は、市民生活にどんな影響をもたらすのだろうか。事業ごとに随時紹介していく。初回は、25日に一部施設が開業した栄町東西街区市街地再開発事業。

 開店30分前の午前10時、真新しいビルを囲むように人の列が延びていく。「苦節12年、やっとここまできた。生き残りへ最後のとりでになる」。市中心市街地商店街協同組合連合会の平野吉隆理事長(71)は感慨深そうに語ると、栄町商店街など3商店街(約150店)の中核施設となる2棟のビルを見上げた。
 再開発構想が持ち上がったのは2007年だった。郊外型店舗の進出などに伴い、かつてにぎわっていたファッションビルや映画館などが相次ぎ閉鎖。空き店舗が増え、通行量は年々減少していた。そこで、商店街の起死回生と定住人口増を狙い、商業施設とマンションの複合型ビルを計画した。
 しかし、事業は紆余(うよ)曲折を重ねた。当初、14年の長崎がんばらんば国体までの完成を目指したが、建設資材や人件費が高騰。規模縮小など3回の事業変更を余儀なくされた。
 今年9月末に完成したビル2棟のうち、この日開業したのは東街区(アエルイースト)。再開発前のビルにあった生鮮食品店など地域密着型の店舗が復活した。「買い物できる場所がなくて、開店をずっと待っていた。帰りに寄れるカフェもうれしい」。堂崎町の久保直美さん(72)は声を弾ませた。
 「人が集まる場所に加え、地元のいい商品を外へ発信する。街を面白くする“ベースキャンプ”にしたい」。オープンした4店舗の一つ、カフェオーナーの陳野真理さん(34)は集いやすいまちづくりに挑む。
 西街区には、民間保育所と市の母子保健事業を担う(仮称)子ども・子育て総合センターが入る。車での移動が多い子育て世代を商店街に呼び込む狙い。幼い娘を抱えた山田麻美さん(27)は「保育所などもあり、これから来る機会が増えそう」と期待を寄せた。
 この事業は総事業費の2分の1を国、県、同市が補助した。市はこのほか、同センターを整備し、民間保育所に助成。この金額を加えると、市の投入総額は19億円近くに達する。さらに再開発ビルの運営会社「タマチ」に約6億円を無利子で貸し付けた。市のこうした支援の在り方や今後の運営に対し、市議会側は厳しい視線を送っている。
 門出を祝う餅まきには、アーケードを埋め尽くす人が集まった。「きょうが始まり。多くの人が愛着を持ち、周辺地域に波及効果を生み出す町に生まれ変わる」。「タマチ」の橋本正理事長(78)は市民の期待を背負い、町再生へのかじ取りを担う。

◎栄町東西街区市街地再開発事業

 地元地権者による再開発組合が2018年1月着工。栄町アーケードを挟む形の敷地約8千平方メートルにビル2棟を建設。東街区(5階建て)は1階が店舗、2階以上の駐車場は224台分。西街区(10階建て)は1階に店舗、2階に民間保育所と(仮称)市子ども・子育て総合センター、3~10階がマンション75戸。店舗と保育所が開設する来春、正式オープン予定。総事業費は約68億6千万円。

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