「欧州フェリー受注へ弾み」 三菱造船・大倉社長 LNG船はコスト競争力強化

長崎で国内向け2隻建造

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大型旅客フェリー2隻を受注し「欧州向け高級フェリー受注に拡大する弾みとなる」と語る大倉社長=長崎市飽の浦町、三菱重工業長崎造船所

 三菱重工業長崎造船所で国内向け大型旅客フェリー2隻(1万6千トン)の建造が12月から始まる。受注した三菱造船(横浜市)の大倉浩治社長は、長崎新聞のインタビューに「欧州向け高級フェリー受注に拡大する弾みとなる」と手応えを語った。一方、主力の液化天然ガス(LNG)運搬船は全て引き渡し、手持ち工事はない。「受注環境は厳しい」としてコスト競争力を高める方針を示した。
 三菱重工は現在、下関造船所(山口県)で国内フェリーを建造しているが、全長200メートル未満の中型までしか対応できず、大型は長崎で担う方針。フェリーは電線や配管を張り巡らせるなど高密度の艤装(ぎそう)が必要なため、中国や韓国との価格競争に巻き込まれにくいという。
 大倉社長は「欧州には豪華な客室を備えた7万トンクラスもある。そのようなフェリーの建造も視野に入れている」と強調。国内フェリー市場については「老朽化に伴う代替が多く、広がりがない」としながらも「長距離トラック運転手不足を背景に海上輸送に切り替える『モーダルシフト』の追い風が吹いており、大型化が進む」とみている。
 LNG船は、韓国の低価格攻勢に国内各社が苦戦を強いられている。これまで三菱重工は米国のシェールガスを輸入する特定航路用を連続建造。球形タンクを並べた「モス型」を採用し、北太平洋など海象の荒い地域を航行する上で安全性が評価されていたが、大倉社長は「LNGは世界中に存在し、いろいろな場所に行ける汎用(はんよう)船の需要が高まり、韓国の(甲板が平らな)メンブレン型が主流になっている」と解説する。その上で「製造方法やサプライチェーン(部品の調達・供給網)の変更も検討している」という。
 このほか長崎では原油タンカー1隻の建造が決定。三菱造船と提携している今治造船(愛媛県)が昨年開発し受注した載貨重量31万トン型4隻のうち、1隻を三菱重工海洋鉄構(長崎市)が受託する。大倉社長は「中国や韓国に対抗するため各社の強みを持ち寄る。ロット受注で分担して建造するのは初めて」と話した。
 こうした状況下、三菱造船と三菱重工海洋鉄構を合わせた商船事業の売上高は、2018年の1500億円程度から、19年と20年は約1千億円まで落ち込む。「3、4年後には安定して1500億円を維持できるまで回復させ、27年や28年には2千億円に伸ばしたい」と当初目標を維持する構えを見せた。
 官民で推進する長崎港のクルーズ船修繕拠点化については「技術的にはすぐ対応できるが、乗客乗員が滞在するためのインフラも必要。(実現には)時間がかかる」との見方を示した。