明治維新以来といわれる「教育改革」はなぜ今、必要なのか

グローバル化の進展やAI(人工知能)・ロボットなどの技術革新によって、今後、社会が大きく変化することが予測されています。こうした時代を生きる子供たちのために、明治維新以来といわれる教育改革が進められています。

見直しの対象となるのは“学力観”そのもの。いったい何を変えようとしているのか、そして、なぜ今変革が必要なのかをひも解いてみます。


これから求められる「学力の3要素」とは?

「今後10~20年で47%の仕事が自動化される」――。2014年、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文が、大きな反響を巻き起こしました。Society5.0と言われるIT化や技術革新によって、人間の仕事が近い将来、コンピューターやロボットに代替されてしまうというものです。

現在、こうした大きな社会の変化に対応するための教育改革が進行しています。この教育改革は「高大接続改革」とも呼ばれ、高校教育、大学教育、それをつなぐ入学者選抜を一体的に改革していこうというものです。

社会環境が大きく変化し、技術革新が進んでいます。こうした中では、単に早く効率的に正解を出すよりも、得た知識を使って課題を発見し、多くの人たちと協力し、課題解決策を生み出していくことが求められてきます。

そこで、今回の改革では、学力観そのものが見直されました。これは「学力の3要素」と呼ばれています。その3要素とは、以下の3つです。

(1)十分な知識・技能
(2)それらを基盤にして答えが1つに定まらない問題に、自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力
(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)

これは、日本に限ったことではありません。米国では「21世紀型スキル」、経済協力開発機構(OECD)では「キー・コンピテンシー」として、これからの社会で生き抜いていくために必要な資質・能力を見直しています。世界の大きな潮流であることがわかります。

高校で始まる「探求」の授業とは何か

では、具体的にはどのように変わっていくのでしょうか。10年に一度改定される次期学習指導要領が、2017年3月に文部科学省から告示されました。高校では2022年から年次進行で実施され、これに基づいて教科書が変わります。

大きなポイントは、高校の授業で「探究」学習が導入されることです。これまで高校では、総合的な学習が、受験対策的な補習に充てられることも少なくありませんでした。正解を早く効率的に求める力は身につくものの、本来目指していた教科横断型の学習や、よりよく問題を解決するための資質や能力を育成できていないのでないかという指摘がありました。

そこで、次期学習指導要領では、「探究」学習を重視することになりました。教科・科目としても、「総合的な探究の時間」「理数探究」「日本史探究」「古典探究」など、さまざまな探究型の授業が導入されます。

「探究」学習とは、自分で課題を設定し、解決方法の情報収集・整理分析・まとめ表現までを1つのサイクルとした、新たな学習プロセスとされています。まさに、自ら問いを立て、解決できる人間の育成が謳われています。

2030年の社会と子供たちの未来

次期学習指導要領の基となった2016年の中央教育審議会教育課程部会の『審議のまとめ』は、「2030 年の社会と子供たちの未来」という章から始まります。つまり、この学習指導要領の改訂=教育改革は、現在の教育からの積み上げ式ではなく、子供たちが社会で生きる未来からのバックキャスト(逆算)で考えられています。

上図は、文部科学省が作成した次期学習指導要領改訂の方向性を簡略化したものです。まず最初に、新しい時代に必要となる資質・能力の育成として「何ができるようになるのか」があります。

その資質能力を育むために「何を学ぶか」で教科・科目が見直され、そして「どう学ぶか」について、主体的で、対話的で、深い学びとして「探究」学習が導入されるということになります。

大切なのは“learn how to learn”

前述したように、これからは変化の激しい、予測が難しい社会がやってきます。そうした中では、得た知識や技能は直ぐに陳腐化してしまいます。だからこそ、主体的に生涯学び続ける力が必要になってきます。

そこでは、「learn how to learn=学び方を学ぶこと」が大切になってきます。今回の教育改革は、大きなチャレンジです。しかし、ここに込められた思いを一人ひとりが考えて、教え育み、学んでいくことが重要になります。

<文:所長 小林浩>

© 株式会社マネーフォワード