東京モーターショーで見てみたかった、今年発表の「浮世離れした4台」

いよいよ第46回東京モーターショー2019が開幕しましたが、一方で多くの輸入車メーカーが出展を見合わせるという、少しばかり寂しい状況です。そこで無理を承知で「もしこんなクルマが並んでいたら、もっと華やかになるかなぁ」という4台を考えてみました。


運さえ良ければ遭遇できる“大物たち”

時代時代に合わせて東京モーターショーの意味や役割は変化してきました。それでも“普段はめったに遭遇することのないクルマを生で見られる”という楽しみは普遍的だったように思います。だからこそ今回、VWやBMW、ポルシェ、ジャガーなど欧州の人気メーカーの姿がないのは、少しばかり寂しい。過去数回に渡って不参加のフェラーリやランボルギーニといったスーパーな存在の復活も、当然ありませんでした。ちなみに参加しているのはメルセデス・ベンツとルノー、BMWアルピナなど数社のみ。

そんな状況を見ていて今年発表になったスペシャルな4台が頭に浮かびました。「アストンマーティン・ヴァルハラ」、「ロールス・ロイス・ベイサイド・ドーン・エアロカウリング」、「マクラーレンGT」、「モーガン・プラス・シックス」です。もっともお安いモーガンの1393.2万円がリーズナブルに感じるほど、他の3台は価格も超が付くほどスペシャルで、どれをとっても私のような庶民には縁遠いクルマばかり。だからこそ「モーターショーに並んでいたら、話題もあり、もっと華やかだろ」と思ってしまうのです。価格を含め、すべてがスペシャルなクルマというのはどんなものなのか、それを目の当たりにするのもモーターショーの魅力のひとつだと思います。近未来のコンセプトではない、運が良ければ遭遇することが出来るかもしれないクルマを1台ずつ、簡単に見ていきましょう。

F1のテクノロジーで仕上げたロードカー

アストンマーティン・ヴァルハラ

パワーの凄さやスタイル、そして価格といい、とにかく今年発表されたクルマの中でもっと破壊力があるのは「アストンマーティン・ヴァルハラ」。もしモーターショーのターンテーブルなどに飾られていたら、多くの人たちを集めたに違いありません。さて、そんなヴァルハラ最大の特徴といえばV6ターボエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムで、その出力は約1,000馬力(1000bhp/英馬力)を発生するといいます。スーパーカーの上を行くハイパーカーであり、全世界で500台限定というスペシャルな存在。アストンマーティンのフラッグシップ以上の存在と言えます。

ちなみにヴァルハラとは、北欧神話に由来する車名で、戦死者の館の意味があるそうです。そこは疲弊した人々を待つ、魂たちの楽園ともいわれています。

このミドシップのハイパーカーはアストンマーティンとF1の有力チームとして知られるレッドブル・アドバンスド・テクノロジーズとの共同開発によるモデル。当然のように最新のF1テクノロジーが取り入れられたカーボン製ボディは優れた空力性能を発揮すると同時に高い剛性と軽量化が施され、まさにレーシングマシンのような仕上げになっているといいます。はっきり言ってしまえば、その辺のスーパーカーとはひと味違う、と言いたげです。

オーバルのステアリングと体がガッチリとホールドするシート

これだけ強烈なパフォーマンスを発揮しながらコクピットは視覚的にシンプルなレイアウトで、運転に集中できる環境作りに努めたそうです。それにしてもオーバル型のステアリングやステアリングコラムにちょこんと着けられたデジタル表示のディスプレイなど、その風景は独特の未来感が漂っています。

ところでアストンマーティンといえば映画「007シリーズ」を思い起こしますが、なんと2020年のシリーズ最新作でのヴァルハラの起用が決定しているそうです。どんな勇姿を見せてくれるのでしょうか、少々楽しみです。実際のデリバリーは2021年開始を予定しているそうですが、その価格はなんと1億5,000万円ほどとか。それでも日本でお披露目された7月時点で、すでに日本国内でも15台ほどのオーダーが入っていると聞きました。まぁ、ここまで特別だと、あまり羨ましくも感じませんが……。

贅沢なロールス・ロイスをさらに贅沢に仕上げると…

ロールス・ロイス・ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング

ただでさえ特別な存在のロールス・ロイスの4シーター・オープンモデル「ドーン」。その佇まいはまさに華やかさに満ちていますが、そんな「ドーン」をベースに特別仕様として仕上げたビスポーク・モデル「ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング」が今年登場しました。その価格は前出のアストンマーティン・ヴァルハラより、グ~ンとお安くお買い得な5,297万8,000円です。これを企画したのは「ロールス・ロイス・モーターカーズ横浜」で、港町・横浜らしくヨットをイメージした仕様になっているといいます。

ロールス・ロイスの特別注文のことを「ビスポーク」と呼ぶのですが、ノーマルでさえも色々とオーナーの好みを反映できる装備が盛りだくさんのロールス・ロイスですから、ビスポークといえばスペシャルの中のスペシャルという存在と言えます。ノーマルのドーンが3,975万円ですから、さらに1,300万円アップのビスポークとはいったいどんなクルマなのでしょうか。

インテリアのカラーはボディカラーと同様に青と白の2トーン

まず目に付くのはフロントシートの背後に備えられた脱着可能なエアロ・カウリング。カーボンファイバーとアルミニウムをたっぷりと使い、上質なレザーでそれらを包み込むという仕上げは見るからに上質。これは風の巻き込みを防いでくれます。もちろんこれを装備しているときは4人乗りが、贅沢にも2シーターになりますから広報担当者は「ロードスターらしい洗練されたデザイン」と大きな特徴としてアピールしていました。もちろんエアロ・カウリングは取り外しも可能ですから、本来の完全な4シーターにもなります。

デザインを担当したのはヨットデザインの経験もあるロールス・ロイス本社のビスポークデザイナーで、高級ヨットやスピードボートに思いを馳せてデザインしたそうです。インテリアは上質な素材をふんだんに使った特別仕様。またドアの内側やソフトトップの格納部分などにヨットのデッキを思わせるチーク材を使ったり、カーボンファイバーを使用しているあたりにも、デザイナーの強い思いが感じ取れます。こういうクルマでゆったりと走ってこそ、本当のハイウエークルージングと言えるのかもしれません。

快適に、でも痺れるほど速くを叶えてくれるスーパーカー

マクラーレンGT

6月20日、東京はJR原宿駅前にあるイベントスペース「jing」において発表されたスーパースポーツです。その名はマクラーレンGT。

その実力は発表イベントの進行と共にどんどん明らかになっていきます。4リッターV8ツインターボの最高出力620馬力、最大トルク630Nmで、ボディ各部にはカーボンファイバーやアルミニウムを惜しみなく使い、このクラスとしては相当に軽量な1,530kgを実現。そして0から100km/hまでの加速時間は3.2秒、0から200km/hまでの加速時間が9.0秒、そして最高速度326km/hというパフォーマンスを聞いていくと、すっかり強烈な走りの世界を経験しているような気分になっていくのです。

しかし、このクルマはあくまでもGTであり「日常的な快適性や利便性を優先的に考えたマクラーレンの新機軸のスーパーカーである」という説明を聞いたところで、気分は幾分クールダウンしました。つまり、これだけの実力を兼ね備えながらも、実は日常的な使いやすさも追求したスーパースポーツだということなのです。例えばこの手のクルマで歩道やバンプを乗り越えるとき、フロントスポイラーをこすったり破損するのではと、相当に気を遣います。以前、マクラーレンの570Sに乗ったときも、装備されている車両リフトシステムを使って高くしながら、ハラハラしながら走っていました。

上質なレザーで仕立てられたインテリアは快適な仕上げになっている

ところがこのGTはフロントスポイラーの下端位置を引き上げて設計し、アプローチアングルは10度で、車両リフトシステムの作動時は13度)を確保したといいます。同時に最低地上高も110mm、車両リフトシステムを作動時させると130mmと高く設定されているので、段差乗り越えのストレスはかなり軽減されると思います。こうした配慮はやはり街中での使いやすさを考えたデザインという事になります。

さらにエンジンルームの上部には容量420リッターの荷室、フロントボンネットを開ければ容量150リッターの荷室が出現するのですが、これはスーパーカーとしてかなりゆとりのある荷室といえます。日常的にスーパーカーを使いたいという人には見逃すことの出来ない選択枝と言えます。価格は2,645万円からですから、まだまだ一般的とは言えませんが……。

クラシカルな佇まいと最新のパフォーマンスの魅力的な融合

モーガン・プラス・シックス

「PLUS SIX(プラスシックス)」とはモーガンの最新モデルです。発表されたのは今年の6月でしたが、実際のデリバリー開始は2020年春ごろを予定しています。モーガンの魅力といえばやはり、このクラシカルなスタイルでしょう。1909年に創業して以来、守り続けてきたモーガン流の世界観は、現在まで連綿と続けられてきた“職人のハンドビルドによる少量生産”によって作り上げられています。かといって中身が古くさいわけではありません。

ボディの骨とも言えるプラットフォームは新設計なんですが、資料によればその開発には3年以上を費やしているといいます。実際にまだ走らせていませんからよく分かりませんが、従来型モデルより、車体のねじり剛性は100%向上していると胸を張るわけですから、走りの質感はかなり向上しているはずです。

シートもインパネもクラシカルな雰囲気だが仕上げは上質で快適

エンジンはモーガンとして初めてターボエンジンを採用し、トランスミッションも信頼性の高いZF製8速ATです。もちろんパドルシフトなどで手動変速も出来るという最新バージョンです。その最高出力は340馬力、最大トルク500Nmを発生します。このエンジンはBMW製3リッター直6ターボエンジン「B58」を採用していますから、信頼性もパフォーマンスも高いレベルにあると思います。なによりも重量が1,075kgという、超が付くくらいの軽いボディが組み合わされますから0から100km/hまでの加速が4.2秒、最高速が267km/hという動力性能のスペックにも納得がいきます。

それで価格は1,393万2,000円からとなっていますから、もちろん実際には買えませんが、なぜか“一生懸命働けば何とかなるかも……”と、どこかホッとした気分になります。

メーカーの出展はなくとも日本スーパーカー協会や東京オートサロンの出店もあり、十分に楽しめそう

今回のように東京モーターショーの出展を輸入車メーカーが見送るには、いくつかの問題が複合的に絡んでのことだと思いますが、仮にこんな車たちが並んでいたら多少なりともわくわく感がアップするかもしれません。それでも今回の東京モーターショー、国産メーカーの興味深い展示やニューモデル、さらには車の展示以外にも色々と楽しいイベントが目白押しです。おまけにオートサロンや日本スーパーカー協会の特別展示などもあって、十分に楽しむことが出来ます。ぜひ尋ねてみてはいかがでしょうか。

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