嫌ダッと言っても愛してやるさ

今年一番悲しかったのは、ミチロウさんが長い長いツアーに出てしまったことである。

あの日は憧れだったゼルダのサヨコさんにインタビューして少し舞い上がっていて、それに冷水を浴びせられるようなとても悲しい報せだった。

ユリイカの増刊は買わなかったけど、さすがにこの文庫は即購入した。

むかし買ったリミックス版を借りパクされたのと、敬愛する石井岳龍監督が解説を執筆されているからだ。

何度か仕事をご一緒させてもらって感じていたが、石井監督は優れた映像作家であると共にこの種のエッセイの名手でもあると思う。混沌としたイメージを膨らませる言葉のセンスが素晴らしい。
そして才気溢れる30代前半のミチロウさんの歯切れ良い文章はパンクの言語化そのもので、東北人特有の鬱屈さを溜め込んで溜め込んで一気に爆発させる狂気が行間にも滲み出ている。
と同時に、どこか己をせせら嗤うような醒めた感情、諦念みたいなものが通底している。
文章とはつくづくその人の本質が否応なく出てしまうものだなと改めて感じた。

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