スーパーバイク世界選手権(SBK)第13戦カタールがロサイル・インターナショナル・サーキットで行われ、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が3レースで優勝。レース1の勝利により、カワサキが2019年シーズンのコンストラクターズタイトルに輝いた。
2019年シーズン最終戦となる第13戦カタール。スーパーポールではレイがポールポジション、2番手をアレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)、3番手をサンドロ・コルテセ(GRTヤマハ・ワールドSBK)が獲得。アルバロ・バウティスタ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)は7番手、清成龍一(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)は18番手スタートとなった。
■レース1:レイのポール・トゥ・ウインでカワサキがコンストラクターズタイトル獲得
ナイトレースで行われるカタールラウンド。多くの照明にコースが照らし出されるなか、レース1は気温31度、路面温度34度のドライコンディションで始まった。
スタートからポールポジションのレイが飛び出してレースをけん引。2番手にはロウズが続く。2周目、5番手を走行中だったトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が1コーナーで転倒。サイクスはここでリタイアとなった。
レイはトップを守るが、2番手のロウズがレイの独走を許さずぴたりを背後につける。そこから少し離れて3番手にコルテセが続くも、4周目にチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)に交わされて4番手に後退。3番手に浮上したデイビスは、トップのレイ、2番手のロウズとは約2秒の差がある状況だ。
4番手に後退したコルテセは、6周目に転倒リタイアとなっている。コルテセの転倒により、バウティスタが3番手のデイビスの後方、約2秒差の4番手に浮上した。
トップのレイと2番手のロウズの差が開き始めたのは、8周目を迎えたころだった。レイはロウズに対し、少しずつアドバンテージを築く。対するロウズは、レイに対し大きく後れを取ることはないものの、その差を詰めることもできずにいた。
終盤、ロウズは3番手のデイビスの追撃を受けることになる。一時は2秒ほどあった差を詰めたデイビズは、残り5周でロウズをとらえて2番手に浮上した。ロウズは明らかにラップタイムを落としており、3番手に後退したのち、デイビスに1秒以上の差をつけられている。
レイはそのまま誰にもトップを奪われることなく、ポール・トゥ・ウイン。独走でレース1を飾った。2位は終盤に見事な追いあげを見せたデイビズ、3位は中盤までレイに食らいつきながらも終盤に後退したロウズが入った。
バウティスタは表彰台にあとひとつポジションが届かず、4位フィニッシュ。最終ラップの最後まで激しく争われた5位はレオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が制し、マイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)は一歩及ばず6位だった。清成は14位フィニッシュを果たし、ポイントを獲得している。
このレース1の結果により、カワサキが2019年シーズンのコンストラクターズタイトルを獲得。2015年から5年連続でライダー、コンストラクターのタイトルを制する結果となった。
■SBK第13戦カタール レース1順位結果(17周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 33’34.518
2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.732
3 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 5.423
4 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 8.043
5 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 17.720
6 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 17.738
7 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 18.176
8 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 20.479
9 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 24.500
10 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 29.320
11 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 33.166
12 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 34.673
13 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 42.661
14 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 50.020
15 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 54.485
16 9 D.シュミッター iXS Racing powered by YART(ヤマハYZF-R1) 08.582
RET 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 11 Laps(リタイア)
RET 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 12 Laps(リタイア)
RET 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 16 Laps(リタイア)
RET 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) スタートできず
■スーパーポール・レース:7番手スタートのバウティスタ、レイに届かず2位
スーパーポール・レースは気温33度、路面温度40度のドライコンディションで行われた。レース1、レース2はナイトレースだが、スーパーポール・レースはこの日一番最初のレースのため、夕方の時刻にスタートする。
レース1同様、レイが好スタートを切るとロウズが追う。オープニングラップで3番手に浮上してきたのは6番手スタートのハスラムだったが、2周目には7番手からポジションを上げたバウティスタに交わされた。
ハスラムを交わしたバウティスタは、2番手のロウズの背後にぴたりとつける。レイはすでに独走体勢を築きつつある。レイを逃したくないバウティスタは2周目でロウズをとらえると、約2秒前をひた走るレイを追う。そのレイは2周目にファステストをマーク。バウティスタの追随を許さない。
レイを追いかけるバウティスタ。ラップタイムに大きな違いはなく、その差はなかなか縮まらない。トップのレイ、2番手のバウティスタは、次第にそれぞれ単独走行となっていった。
一方、3番手にポジションを落としたロウズはハスラムとテール・トゥ・ノーズ状態。さらに5番手のデイビスが後方に迫る。
レイはそのままトップを守り、バウティスタに対し約2秒差を築いてレース1に続いて独走優勝を飾った。バウティスタはレイに迫ることはできなかったが、7番手から見事、2位表彰台を獲得。接戦が展開された3位はロウズが守り切り、ポディウムに上った。
惜しくも表彰台を逃したハスラムは4位、5位にはデイビスが入り、清成は16位でフィニッシュを果たしている
■SBK第13戦カタール スーパーポール・レース順位結果(10周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 19’41.833
2 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.027
3 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 5.143
4 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 5.303
5 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 6.615
6 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 9.744
7 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 9.804
8 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 10.223
9 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 15.236
10 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 15.770
11 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 17.557
12 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 18.981
13 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 19.933
14 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 20.060
15 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 21.805
16 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 29.458
17 9 D.シュミッター iXS Racing powered by YART(ヤマハYZF-R1) 40.175
18 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 40.203
RET 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 5 Laps(リタイア)
RET 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 1周できず
■レース2:レイがバウティスタの追撃を退け3連勝。完勝でシーズンを締めくくる
レース2は気温31度、路面温度34度のドライコンディションで行われた。グリッド順はスーパーポール・レースの結果により、ポールポジションがレイ、2番手にバウティスタ、3番手にロウズというフロントロウだ。
レース1、スーパーポール・レースに続いてレイが好スタートからホールショットを奪う。そのレイに続くのはバウティスタ、そしてロウズ。オープニングラップをトップで終えたレイだったが、メインストレートでレイの前に出たバウティスタが1コーナーでレイをオーバーテイク。トップに立つも、続くコーナーでレイがそのポジションを奪い返す。
バウティスタも応戦するが、ラインを外すなどして結果的にレイとの差を広げることになった。レイとバウティスタがトップを争うその後方では3番手争いも接戦が展開される。3周目にはロウズが後退し、ファン・デル・マークが3番手に浮上。しかし4周目には1コーナーでデイビスがファン・デル・マークを交わし、3番手に躍り出た。
一方、トップ争いを展開するバウティスタは、4周目にファステストラップを叩き出してレイとの差を詰めていく。レイが独走体勢に入ればとらえることは容易ではない。バウティスタが勝つためには、まだ差が小さい序盤のうちにレイをとらえる必要があった。
レイとの僅差を守ったまま周回を重ねるバウティスタ。8周目を迎えるころには、ここに、3番手のデイビスが追い付いた。その翌周の9周目、ついにバウティスタがレイを1コーナーでオーバーテイク。しかし序盤のオーバーテイクの繰り返しのように、コーナーでレイが再びトップを奪還。
バウティスタは長いメインストレートで、ドゥカティ パニガーレV4 Rの加速力を使ってレイに何度も追いついている。しかしコーナリングで勝るレイが、2コーナーから先でトップに返り咲く。周回数は残り10周。デイビスはレイとバウティスタに追いつき、トップは3台ワンパックとなった。
しかし、レース後半に入ってバウティスタが次第にペースを落とす。レイとの差はあっという間に開いていき、残り5周を迎えるころには、レイとバウティスタとの差は約1.5秒になっていた。明らかにペースの落ちたバウティスタに、3番手のデイビスが迫る。
残り4周、デイビスがバウティスタをとらえた。バウティスタはなすすべなく3番手に後退。しかし、デイビスから離されることなくその背を追う。
2019年シーズン最後のチェッカーフラッグを、トップで受けたのはレイだった。カタールラウンドの3レースすべてで勝利。2019年シーズンで合計17勝を挙げた。2位でフィニッシュしたのはデイビスで、チームメイト同士のバトルを制している。3位フィニッシュはバウティスタ。2019年シーズンの1年のみでAruba.it レーシング-ドゥカティを離れることが決まっているバウティスタが、同チームとしてはラストレースで表彰台を獲得した。バウティスタはSBK参戦初年度で、ポイントランキング2位につけてシーズンを終えている。
ロウズは、パタ・ヤマハ・ワールドSBKチームでのラストレースを4位でフィニッシュ。この結果で、チームメイトのファン・デル・マークと争ったランキング3位の座を手にした。カタールラウンドでは表彰台争いに食い込めなかったトプラク・ラズガットリオグル(ターキッシュ・プセッティレーシング)は5位。インディペンデントチームとしてトップのベスト・インディペンデントチームの獲得に貢献した。自身としてもインディペンデントライダーのランキングトップを獲得している。
2019年シーズン限りでカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBKを離れるハスラムは9位、今季限りでの現役引退を表明しているマルコ・メランドリ(GRTヤマハ・ワールドSBK)は、現役最後のレースを17位で終えた。結成1年目のモリワキ-アルティア・ホンダ・チームから参戦した清成は、18位。ポイントランキングとしては19位で今シーズンを締めくくった。
スーパースポーツ世界選手権(WSS)はルーカス・マヒアス(Kawasaki Puccetti Racing)が今季2勝目を挙げた。2位にはジュール・クルーゼル(GMT94 YAMAHA)、3位にはイサック・ビニャーレス(Kallio Racing)が入り、WSSにフル参戦する唯一の日本人ライダー、大久保光(Kawasaki Puccetti Racing)は8位フィニッシュ。5位に入ったランディ・クルメンナッハ(BARDAHL Evan Bros. WorldSSP Team Y)が2019年シーズンのチャンピオンに輝いた。大久保は、ランキング5位でWSS参戦4年目のシーズンを終えた。
スーパースポーツ世界選手権300(WSS 300)に参戦する岡谷雄太(DS Junior Team)は、オープニングラップで転倒を喫してリタイアとなっている。
2019年シーズンのSBKは序盤にバウティスタが連勝の旋風を巻き起こして始まり、レイの5連覇、カワサキのコンストラクターズタイトル獲得で幕を閉じた。2020年は、トップチームのライダーの移籍が多い。シーズンはまた別の様相を呈してくることだろう。
以下、SBK第13戦カタールのレース2順位結果。
■SBK第13戦カタール レース2順位結果(17周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 33’34.809
2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.978
3 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 3.100
4 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 12.473
5 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 14.346
6 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 15.109
7 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 15.625
8 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 16.020
9 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 17.854
10 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 18.332
11 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 22.254
12 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 22.387
13 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 28.179
14 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 29.487
15 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 32.586
16 2 L.キャミア モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 35.726
17 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 40.549
18 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 44.844
RET 9 D.シュミッター iXS Racing powered by YART(ヤマハYZF-R1) 12 Laps(リタイア)
RET 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 15 Laps(リタイア)