産業としての認知不十分 長崎国際大人間社会学部国際観光学科 板垣朝之教授(64) インタビュー

板垣朝之教授

 長崎県は異文化交流の歴史や景観のほかに、被爆遺構などのダークツーリズムもあって観光地としての潜在能力は元々高いにもかかわらず、観光が産業としてまだまだ認知されていないと感じる。観光は外貨を獲得するという意味で輸出産業と同じ。最近までは観光行政も「黙っていても客が来る」という要素が大きかったのではないか。
 世界文化遺産は登録されると一時的に観光客が増えるが、継続して増え続けるケースは少ない。人類の宝を保存して次世代に残すというのが主眼なので、観光とは相いれない側面がある。すぐに観光の目玉になるインスタントな集客マシンではない。もっとサステイナブル(持続可能)な体制を整えて、良さを地道にアピールしていくことが大切だ。
 本県の大きな課題の一つは県南と県北の周遊性。行政は予算の関係でどうしても区画の中で還元するという考え方になりがち。縄張り争いをするのではく、行政区画を超えた広域連携が必要不可欠だが、なかなか難しい。そこで行政以外で観光地域づくりを主導するDMO(観光地域づくり推進法人)の存在が求められている。地域が同じベクトルを向くためには、小学生から高齢者まで観光について考える場をもっとつくらなければならない。

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