新設ラリークロス『タイタンRX』は、全戦表彰台のケビン・ハンセンが初代王者に

 ラリークロス界のトップドライバーのみならず、スポーツカー耐久やGTレース、ツーリングカーレースなどあらゆるジャンルのドライバーが結集した新設ラリークロス選手権『タイタンRXラリークロス・シリーズ』最終戦がドイツ・エステリンクで開催され、シーズン最終ヒートで4勝目を飾ったケビン・ハンセンがシリーズチャンピオンを獲得。シリーズ全12戦のすべてで表彰台に上がる抜群の安定感で、初代王者に輝いた。

 2019年に鳴り物入りでスタートした『タイタンRXインターナショナル・ヨーロッパ・シリーズ』は、その競技運営をオーストリアの名門ラリークロス・コンストラクターであるMJPレーシングが担当し、彼らの製作したワンメイクフレーム“パンテーラRX6”が使用される新選手権となっている。

 この新生ラリークロス・シリーズにレギュラー参戦するのは、ティミー&ケビンのハンセン兄弟や、GRCレッドブル・グローバル・ラリークロス元王者のトーマス“トピ”ヘイキネンら、WorldRX世界ラリークロス選手権を経験する実力派揃い。さらにスポット参戦ながらシーズン中にはヘイデン・パッドンやクレイグ・ブリーンといったWRC世界ラリー選手権現役組に元BTCC王者アンドリュー・ジョーダン、ネルソン・ピケJr.やトム・コロネルら、そうそうたるスタードライバーが名を連ねた。

 10月19~20日開催のシリーズ最終となる第6戦にも、レネ・ミュニッヒやケビン・エリクソンなどラリークロス界の名手がエントリー。その週末で主役を演じたのは、ここまでのシーズンを席巻する3名、ハンセン兄弟とヘイキネンだった。

 9月開催の第4戦オーストリア・MJPアリーナではヘイキネンと兄ティミーが、続く10月の第5戦ハンガリー・ニヤドでの1戦はティミー&ケビンのハンセン兄弟が勝利し、迎えた最終戦。

 土曜のラウンド11こそWorldRXではGCコンペティションのルノー・メガーヌR.S.RXスーパーカーをドライブするジェローム・グロセット-ヤニンがシリーズ初優勝をマークしたものの、初年度カレンダー最後のヒートで混戦のタイトル争いを制したのは、日曜クオリファイからセミファイナルまで1度もトップタイムを記録しないまま進出してきたケビンだった。

プラクティスから速さを見せたのは、兄のティミー・ハンセン。弟ケビン、トピ・ヘイキネンの3名が初年度を牽引した
元GRC王者でもあるトピ・ヘイキネンは、シーズン最終戦でまさかのアクシデント。王座挑戦権を失う形に
土曜のラウンド11で初勝利を挙げたジェローム・グロセット-ヤニンは、終盤3戦連続表彰台でランキング4位に

 この日のセミファイナルを通過し、ファイナルに進出したのはティミー&ケビンのハンセン兄弟とヘイキネン、そして前日勝者のグロセット-ヤニンにワイルドカード参戦のケビン・エリクソン、そして女性ドライバーのモリナーロという6名。

 フルウエットのスタートから1コーナーに向け、ハンセン・モータースポーツの2台とヘイキネンのアウディA1がスリーワイドで突入すると、インを抑えたケビンが首位に立つ。すると2周目に入ったところで2番手アウディのボンネットが揺れ始め、3周目のバックストレートでついに全開に。

 完全に視界を失ったヘイキネンはなす術なくスローダウンし、背後にいたティミーもラインを外したことでブレーキングポイントを誤り、次々と後続にパッシングされ最後尾まで下がる事態となってしまう。

 これで楽になったケビンは7周を走破して悠々のトップチェッカー。今季4勝目を飾ると同時に、タイタンRXインターナショナル・ヨーロッパ・シリーズ初代チャンピオンの称号を手にした。

「本当に素晴らしいシーズンになった。毎戦ポディウムに立つなんて信じられないことだし、初めてのシリーズでタイトルを獲得できるなんて、思ってもいなかったよ」と、喜びを語った弟のケビン。

「僕自身も懸命に戦ったし、マシンのこともよく理解できるようになってきたけど、クルマはシーズンを通じて完璧に機能してくれた。これこそが重要な点で、僕らのクルーがパーフェクトな仕事をしてくれたからこその結果だ」

 この最終ヒートではケビン・エリクソン、グロセット-ヤニンの表彰台となり、シリーズランキングでは弟の王者ケビンと同じくシーズン4勝の兄ティミーが2位、同3勝のヘイキネンが3位に続いている。

雨の一人旅となったシーズン最終ヒートを制し、ケビン・ハンセンが初代王座を獲得した
表彰式のプレゼンターを務めているシリーズアンバサダーのアリ・バタネンからトロフィーが贈られた
初参戦のケビン・エリクソンもさすがのドライビングで2位に入っている

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