朝乃山「小結より上目指す」

高砂親方(右)と握手する新小結の朝乃山=28日、福岡市の高砂部屋宿舎

 大相撲で郷土の期待を一身に背負う朝乃山(25)=富山市呉羽町出身、高砂部屋=が、年明けから掲げ続けた「年内に三役」という目標を実現させた。28日発表された九州場所の新番付で西前頭2枚目から西小結に昇進。小結を4人に増やした日本相撲協会の特例的な対応に、大関、横綱も見据えた大器への期待がうかがえる。優勝経験もある実力者は「小結で終わらないように頑張る。2桁白星を目指したい」と大関とりを視野に入れた。

 朝乃山は西前頭8枚目だった5月の夏場所で初優勝した後にも三役昇進が予想された。だが、番付運に恵まれず、翌場所は東前頭筆頭にとどまって7勝8敗で負け越し。秋場所は西前頭2枚目で上位総当たりに再挑戦して10勝を挙げた。ただ、今回も小結2人のままなら、入れ替わる転落者がいないため、前頭筆頭にとどまるとの見方もあった。それだけに「素直にうれしい」と喜んだ。同じ富山市出身の米プロバスケットボールNBA、ウィザーズの八村塁の存在も刺激になっており「一緒に富山を盛り上げたい」と話した。

 上位陣の壁を突破するため、元ボディービルダーの付け人の助言を受け、下半身を中心とした筋力トレーニングに汗を流す。立ち合いの圧力を強め、低い姿勢で左前まわしを狙うなど取り口を研究し、成果が出てきた。

 同協会は小結を増やしたことについて、幕内の定員42人の地位を場所ごとの結果に応じて判断するのが基本というが、近年では異例の対応だ。優勝を経験し、三賞を5回受賞している実力者が平幕で足踏みしないよう配慮もあったとみられる。次のステップとなる大関昇進には、関脇、小結に3場所連続在位し計33勝が目安になる。

 高砂親方(元大関朝潮)は「三役で2桁勝たないと大関を口にしてはいけない」と言いながらも「顎を上げず、突き押しの相手をさばければもっと強くなる」と期待する。

 一年納めの九州場所次第では年間最多勝も狙える。5場所で45勝の関脇御嶽海、小結阿炎を1差で追い掛ける。大関レースのライバルともいえる2人を抜き去れるか、注目される。

 2桁勝ち続ければ、県出身では第22代横綱太刀山の1909年以来となる大関昇進が現実味を帯びる。その先も、富山商業高校元相撲部監督の故浦山英樹さん=享年(40)=との角界の頂点を目指す約束がある。

 高砂親方は来年12月に65歳で同協会の定年となるまでの横綱育成を問われ「夢として見守っていきたい」と笑みを浮かべ、朝乃山は「期待に近づけるよう頑張る」と応じた。(編集委員・北崎裕一)

■県出身三役3人目 昭和以降

 県出身力士で昭和以降に三役を務めたのは、関脇まで昇進した若見山(富山市西田地方町出身)と琴ケ梅(同市八尾地域出身)の2人しかいない。

 若見山は170キロ超の巨漢で、1960年代に四つ相撲で活躍。横綱まで上り詰めた北の富士、大関になった清国らと一時はライバル関係で「若手三羽ガラス」と呼ばれた。64年の夏場所に新小結となり、65年九州場所、66年初場所の2場所連続で関脇を務め、三役在位は計5場所だった。

 琴ケ梅は、横綱になった北勝海(現・八角日本相撲協会理事長)や双羽黒、大関小錦らがいた「花のサンパチ組」(昭和38年生まれ)の1人で、横綱千代の富士が君臨していた頃にしのぎを削った。低い重心からの押し相撲が持ち味で、89年に関脇で2場所連続で10勝したが、翌場所は8勝で大関になれなかった。三役在位は計18場所だった。

 元琴ケ梅の北山聡さんは28日、北日本新聞の取材に「平幕時代とは周囲の見る目も変わってくるが、乗り越えて頑張ってほしい」と新三役の朝乃山にエールを送った。

© 株式会社北日本新聞社