『RUN! -3films-』 俳優たちの圧倒的な芝居への愛を感じる

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 若手俳優たちを中心に、疾走感あふれる短編3作品を集めたオムニバス映画です。深夜のコンビニを舞台に、店員と強盗が「あれ!? もしかしておれたち同級生じゃね!?」というところから始まる、丁々発止のやり取りをユーモアたっぷりに描いた『追憶ダンス』。人を食べないと生きられない運命を生きる親子の姿を描いたSF物の『VANISH』。そして、売れない役者が現実と幻想の境界線を疾走する『ACTOR』。3編から共通して伝わってくるのは、役者たちの芝居に対する圧倒的な熱量です。

 2編の監督を務めた土屋哲彦は、役者たちとともにエチュード(即興芝居)のワークショップをしていたのだそうで、その経験がお芝居をしている役者さんたちの演技にも色濃く出ています。例えば『追憶ダンス』でコンビニ店員と強盗を演じた篠田諒と木ノ本嶺浩の、エンドロールに出てくる会話は、監督がエチュードを2人に任せた結果なのだとか。

 役者さんたちがお芝居を心から楽しんでいることがスクリーンからも伝わってくるのですが、その中でも圧倒的な熱量でお芝居を楽しんでいるのが、全ての作品に出演している津田寛治。みずみずしい若手たちの芝居に、嬉々として個性的なキャラクターを演じている津田の芝居への情熱が、俳優たちに伝染して、作品のテンションも一気に上がっていきます。短編というのは基本的に映画祭以外では観ることがなかなかできないので、こんな風に一本の長編になった作品が今後もっと増えていってほしいなと思っています。★★★★★(森田真帆)

監督:土屋哲彦、畑井雄介

出演:篠田諒、木ノ本嶺浩、松林慎司、黒岩司

画像:「追憶ダンス」

11月2日(土)から全国順次公開

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