焼き肉は今や“外食の王様”だが、もしもあの発明品がなければ焼き肉ブームは起きなかったかもしれない。その発明とはテーブルの真ん中についている「無煙ロースター」。煙を吸い込む要の部品には、なんと“宇宙ロケット”の技が使われていた。
世界初!焼き肉を変えた「無煙ロースター」
焼肉店といえば、かつては煙がモクモクなんて当たり前。服に匂いや油がついたりして女性や家族連れに敬遠されていたが、名古屋に本社を置く「シンポ」が世界初の煙を吸い込む「無煙ロースター」を発明すると状況は一変。客層が一気に広がり、空前の“焼き肉ブーム”へとつながっていくのである。
ロケット部品を手がける職人集団!
愛知県あま市にある「豊スピニング」はシンポの協力会社で、「絞り」と呼ばれる金属加工を得意とする。どんな技か見せてもらった。まず金属の板をマシンにセット。くるくる回転を始めると、ローラーを押し当てながら形を作り上げていく。まるで陶芸家のような動き。金属の板が「筒」の形になったり、滑らかな曲線が美しい「椅子の脚」に変わるのだ。しかも“つなぎ目”は一切ない。なのにピタリと同じサイズが次々にできるのだから、魔法のようである。
溶接がいらない“絞り”は、軽量化が欠かせないロケット部品の製造にも引っ張りだこ。工場では燃料タンクの部品製造を任されているという。
無煙ロースターの“トップリング”に絞りの技
この「絞り」の技は、無煙ロースターの要の部品「トップリング」にも使われていた。トップリングとは、焼き肉の煙を吸い込む穴がいくつも空いた“丸いリング”のこと。誰もが焼き肉店で見たことがあるはずだ。
なぜ、“絞り”を無煙ロースターに使うのか?
「トップリングは来店するお客さんの目につきやすいところ。つなぎ目があると歪みやすくなり、見た目にも良くない。だから絞りの技を使う。」(シンポ担当者)
トップリングをどうやって作るのか。金属の板が回転を始めた。押し当てるローラーを微調整するのは職人。強く当てすぎると割れてしまうことがあるため、力加減に神経を集中させる。絞る前はただの金属の板が、キレイなお皿の形へと変身を遂げた!真ん中をくり抜いた後、今度はプレス機で煙を吸い込む穴をあけていく。
あける穴は全部で90個。この穴の数が煙を吸い込むのにちょうど良い力を生み出すんだとか。90個もの穴をあけても、リングにしわや、ひずみがないのには驚かされる。
薄皮一枚!0.2ミリの“削り技”でピッカピカ!
穴をあけ終えたトップリングは仕上げ工程へ。やすりで磨き上げるかと思いきや、手元を見ると特殊な道具でトップリングを削っている。しかも削り取ったのは、わずか0.2ミリ。薄皮一枚を剥ぐようにしてピカピカに仕上げていたのだ。頼りは手に当たる感触だけというベテラン職人のスゴ技。削る前と後を比べると輝きがまるで違っていた。
焼き肉店に行ったら、テーブル中央で輝く「トップリング」にも目を向けて欲しい。
【工場fan編集局】