坂本弁護士一家追悼の音色 魚津・慰霊碑前で合唱と演奏

慰霊碑に手を合わせる合唱団SATOKOの古川代表(右)=魚津市三ケ

■殺害から30年

 オウム真理教の幹部らに殺害された坂本堤弁護士=当時(33)=一家を弔う演奏と合唱が29日、堤さんの妻、都子(さとこ)さん=同(29)=の遺体が見つかった僧ケ岳に近い魚津市三ケの慰霊碑前で行われた。11月4日で1989年の事件発生から30年。ゆかりの音楽家や市民有志の合唱団「SATOKO」が追悼の音色を響かせた。合唱団は団員が高齢になったため、今年で最後の参加となった。

 合唱団は、魚津市内での追悼コンサートの市民公募合唱団として2004年から活動。都子さんが生前作った詩を基にした「あなたの心に」を歌い、子どもたちにも伝えてきた。コンサートが13年で幕を閉じた後は慰霊碑前で毎年歌ってきたが、団員の多くが70代となり継続が難しくなった。

 慰霊碑前では雨の中、団員約20人が「あなたの心に」を歌った。古川敏子代表(80)は「これからも都子さんの思いと一緒に生きていく」と語った。魚津の追悼コンサートの実行委員長、小熊清史さん(71)は「事件を知らない世代に語り伝えるための方法を探りたい」と話す。

 慰霊碑前での追悼演奏は今野強(いまのつよし)さん(76)=埼玉県坂戸市=が中心となって開催。坂本さん夫妻と親交のあったバイオリニストの松本克巳さん(66)=東京都小平市=らは、森の中で見つかった一家をしのんで「木々のうた」を奏でた。

 坂本さん夫妻と長男の龍彦(たつひこ)ちゃん=当時(1)は、横浜市の自宅で殺害され、1995年に新潟、富山、長野各県で遺体が見つかった。今野さんらは28日、堤さんが見つかった新潟県上越市で演奏した。龍彦ちゃんが見つかった長野県大町市は年内に訪れる。30日は黒部市の千光寺で演奏する。 (新川支社・松下奈々)

慰霊碑の前で演奏する林さん(左)と松本さん
ゆかりの音楽家や地元住民ら約40人が献花した
雨の中、事件からの30年を振り返る今野さん(左)
慰霊碑の前で「あなたの心に」を歌う合唱団SATOKO

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