手取りの半分、ボーナス全額を返済にまわす「繰り上げ返済貧乏」

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読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、2年前に分譲マンションを購入した40歳の独身男性。住宅ローンを早く終わらせたい一心で返済に励んでいるため、貯蓄ができない状態だといいます。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

分譲マンションを2年ほど前に購入しました。結婚願望がなく、一生一人で住もうと思い購入しました。とにかく住宅ローンは早く返したいと思い、毎月の手取り収入の半分以上と、ボーナスのほぼ全額をローン返済に充てています。

50歳までに完済し、60歳までに老後資金を貯めようと考えています。老後資金の目標金額は3000万円。外国と日本を往復するような暮らしができればと思っています。そこで少し気になっていることがあります。

まず、マンションのローンを完済しても、管理費や固定資産税の支払いは残ります。その状態で毎年300万円ほどの貯蓄をすることは可能なのかということ。また、独身とはいえ、貯蓄らしい貯蓄が数十万円しかない状態でよいのかどうか。

また、定年までに給料が下がっていく人はどのくらいいるのでしょうか。収入が下がれば貯蓄が予定通りにできなくなるだろうことも気になりますが、今現在、ねんきんネットの試算では毎月15万円ほどの年金受給額になるとされているのに、それが下がってしまいそうなことも気になります。将来の見通しが知りたいです。よろしくお願いします。

〈相談者プロフィール〉

・男性、40歳、未婚

・職業:商社勤務

・毎月の手取り金額:約31万円

・年間の手取りボーナス額:約90万円

・預貯金:40万円

・外債:200万円

・財形貯蓄:30万円

・確定拠出年金:300万円(会社負担)

【支出の内訳(31万円)】

・住居費:16.5万円

・食費:3.8万円

・水道光熱費:1.7万円

・日用品代:0.5万円

・生命保険料:0.9万円

・交通費:0.8万円

・通信費:1万円

・被服費:1万円

・趣味・娯楽費:0.8万円

・固定資産税積立て:1.2万円

・貯蓄:3万円(主に住宅ローン繰上げ返済の積立)


FP:ご相談ありがとうございます。マイエフピーのファイナンシャルプランナー、関口です。住宅ローンを組んだため、将来が心配ということですね。改善のヒントとなるように相談者さんの現状からいえることを、お伝えしますね。

現状は「繰り上げ返済貧乏」状態

大きなローンを抱えていると、きちんと返済していけるのか不安になりますし、とにかく早く返してしまいたいという気持ちになることはよくわかります。

ですが今は、ちょっとがんばりすぎな状態のようにも思えます。客観的に家計状況を見ると、ご自身で仰るとおり、住宅ローンの返済額は手取り収入の半分以上。一般的には、かなり生活を圧迫する固定費の割合となっています。

そんな中で、3万円の余剰金を出し、さらに固定資産税の積立もしているということなので、やりくりが上手なのだと思います。

ただ、そうしてできた貯蓄をすぐに繰り上げ返済に充ててしまうので、貯蓄がない、いわゆる「繰り上げ返済貧乏」ともいえる状態ですね。これは少々心配です。

住宅ローン控除期間中は返済と貯蓄の両立を

今は住宅ローン控除が効いている期間でしょう。それが効いている購入後10年間までの間は、繰り上げ返済に必死にならず、通常の返済と貯蓄を両立させていくことを考えてもよいと思います。その間に、思いのほか貯蓄が増えたということでしたら繰り上げ返済をしてもよいでしょう。

住宅ローン控除は、その年の年末の住宅ローン残高の1%が税額控除されるもの。毎年最大40万円までもどります。その額を少なくしてしまうのは、ちょっともったいないですね。もし、利用している住宅ローン金利が1%以下であれば、その金利差と住宅ローン残高を掛け算した分、もうけが出ることにもなりますから。

時期を区切って「返済」「貯蓄」と取り組むよりも、並行して2つに取り組むほうが、生活も楽しめるでしょうし、返済しなくちゃと焦る気持ちも和らぐと思います。

貯蓄は生活費の7.5ヵ月分を最低限の目標に

気持ちの面だけではなく、貯蓄がないことは「生活防衛資金」がないことにもなります。

例えば、今、相談者さんがケガまたはご病気で、入院と療養が必要になったとします。今入っている保険である程度の医療費はカバーできるかもしれません。ですが、生活費となるとどうでしょうか。相談者さんの生活費の面倒を見てくれる人はいません。ですからご自分で準備しておかなくてはいけないのです。

イレギュラー支出を含め、そういった生活費として毎月の生活費の1.5ヵ月分、生活防衛資金として最低でも6ヵ月分を持っていれば、不測の事態が起きても生活を立て直せるのではないかと考えられるのです。心配であれば、10ヵ月分でも1年分でもよいのですが、そういった自分のための資金はすぐに下ろせる口座で、しっかり持っておくことをお勧めします。

実は、万が一病気やけがをしても、健康保険適応の治療なら国の医療費制度の中の「高額療養費制度」が利用できますし、会社を休むと「傷病手当金」を受けられるケースも多いと思います。

そこにさらに保険金が出れば、貯蓄はなくてもいいという場合もあるでしょうが、こればかりはその時になってみないとわかりません。

そういう意味でも備えていてほしいのです。これが、貯蓄と返済を並行して欲しいと思うもう一つの理由です。

返済だけではなく、貯蓄や自己投資にも目を向けて

今後の収入がどうなるかについてですが、男性の場合は平均を見ると「定年まで上がる」というデータもありますが、一方で「50代後半に役職定年になり、大きく下がる」というケースも多くみられます。

つまり、ご自分が働いている会社の仕組みにより個別に異なるということです。ご自分の会社の先輩に聞くなど、情報収集をしてみてもよいと思います。

仮に、今後下がっていくとすると、やはり頼りになるのは貯蓄です。会社が確定拠出年金の掛け金を出してくれているということなので、現在企業型の確定拠出年金をしているのだろうと思いますが、規約を確認したうえで、個人型の確定拠出年金(iDeCo)を始めて、老後資金をよりしっかりと準備するのもよいでしょう。

もし規約で、iDeCoが利用できないのであれば、つみたてNISAという運用益非課税の制度を利用してもよいと思います。20年間という長期間、非課税運用ができますから、こちらもお勧めです。

相談者さんは、今は返済ばかりに目が行っていますが、定年までに自分の仕事に力をつける、人脈を作るような自己投資はしていますか?

必ずしも必要ではないかもしれませんが、仕事の幅を広げるには、自分以外の他者の意見や考え方を知ることも大きなヒントになります。そのためにも、返済への気持ちは少し抑え、貯蓄をしたり自己投資をしていくようにすると、また違った気持ちを持ているようになるかもしれません。

なにより貯蓄がしっかりあれば、住宅ローンも老後資金も不安ではなくなるでしょう。バランスを考えつつ、取り組んでみてください。